このページの要点
- 特定商取引法43条、景品表示法5条、薬機法66条は同じ広告に重なってかかる。効果の表示は、裏付けの資料の提出を求められ、出せなければ優良誤認とみなされる(景品表示法7条2項)。
- 化粧品の効能は、厚生労働省通知の56項目の範囲まで。「シミが消える」「シワがなくなる」は範囲外。美顔器の医療機器的な効能は、承認の問題にもなる。
- ビフォーアフター写真は、撮影条件・加工・期間を明示し、本人の事前の同意(媒体・期間・削除の申出)を取って使う。体験談だけでは効果の根拠にならない。
- 割引や特典と引き換えの口コミ依頼は、事業者の表示になり得る。2023年10月1日から、広告であることが分からない表示は景品表示法違反(告示)になる。
エステの広告に重なる法律と、違反したときの手段
エステの広告は、一つの広告に複数の法律が同時にかかります。コースの広告か、単発メニューの広告か、化粧品の説明か、口コミかによって、中心となる法律が変わります。まず全体像を表にします。
| 法律(対象になる広告) | 禁止される内容 | 違反したときの手段 |
|---|---|---|
| 特定商取引法43条(特定継続的役務提供の誇大広告の禁止) (1か月超・5万円超のコースの広告) | 役務の内容・効果などについて、著しく事実に相違する表示、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示(対象事項は施行規則103条。役務の種類・内容、効果・目的、国や著名な団体・個人の関与、対価、期間、解除に関する事項など) | 資料提出の要求(43条の2)、指示(46条)、業務停止命令(47条) |
| 特定商取引法12条(通信販売の誇大広告の禁止) (ネットで申込みを受ける広告(単発メニューを含む)) | 役務の内容などについての、著しく事実に相違する表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示 | 資料提出の要求(12条の2)、指示(14条)、業務停止命令(15条) |
| 景品表示法5条1号〜3号 (あらゆる広告・表示) | 実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認)、取引条件が著しく有利と誤認される表示(有利誤認)、告示で指定された表示(ステルスマーケティングなど) | 措置命令(7条1項)、課徴金(8条。売上額の3%)、優良誤認・有利誤認には罰金(48条) |
| 医薬品医療機器等法66条・68条 (化粧品・医療機器などの名称・効能・効果・性能の広告) | 虚偽・誇大な広告(明示的でも暗示的でも)、医師などが保証したと誤解されるおそれのある記事、承認前の医療機器などの広告 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(85条)、課徴金(75条の5の2。対価の額の4.5%) |
| 健康増進法65条 (食品として販売するサプリメントなどの広告) | 健康の保持増進の効果などについて、著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示 | 内閣総理大臣または都道府県知事による勧告(66条1項)、勧告に従わない場合の命令(同条2項) |
たとえば、サロンのウェブサイトに「当店のコースなら、1か月で確実に5kg痩せる」と書いた場合、そのコースが特定継続的役務提供に当たるなら特定商取引法43条の対象で、ネットで申込みも受けるなら同法12条の対象にもなり、景品表示法5条1号の優良誤認にも当たり得ます。この三つは、いずれも「事実と違う」「実際より優良」という同じ内容を、それぞれの法律の立場から規制しているため、一つの広告に対して、法律ごとに別の行政庁が動くことがあります。なお、事業者には、表示を適正に管理するために必要な体制の整備その他の措置を講じる義務があります(景品表示法22条1項)。小規模のサロンでも、この義務は同じです。
「痩せる」「小顔」「永久脱毛」:効果の表現と、根拠資料
効果を断定する表現が問題になるのは、「効果がない」から、とは限りません。効果があると言うなら、それを裏付ける合理的な根拠を持っていなければならない、という仕組みが、法律に組み込まれているからです。
景品表示法7条2項は、内閣総理大臣(消費者庁長官)が、表示が実際より著しく優良であるか(優良誤認か)どうかを判断するために必要があるときは、事業者に期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出しない場合は、その表示は優良誤認とみなされると定めています。特定商取引法も、コースの広告について同様の仕組みを持ち(43条の2)、通信販売の広告にも置いています(12条の2)。運用指針(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」平成15年10月28日、平成28年4月1日一部改正)は、この手続と判断の基準を、次のように示しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる表示 | 痩身効果などの、効果・性能に関する表示 |
| 資料の提出期限 | 文書で求めた日から原則15日後。延長は書面の申出と正当な事由が必要で、新たに試験・調査をする必要がある、という理由は正当な事由とされない |
| 合理的な根拠の要件 | (1)提出資料が客観的に実証された内容であること(試験・調査の結果、専門家等の見解または学術文献)、(2)表示された効果と、資料が実証した内容が適切に対応していること |
| 体験談・モニターの意見 | 実例を集めた調査結果を根拠にするには、無作為抽出で相当数のサンプルを選ぶなど、統計的に客観性が確保されている必要がある。自社の従業員やその家族、体験談を自ら送ってきた利用者だけを集めた調査は、客観的に実証されたものと認められない |
| 表示された効果の認定 | 特定の文章や写真ではなく、表示全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準になる |
ここから、エステの広告について、実務上の三つの注意点が出てきます。
第一に、お客様の体験談やアンケートは、それだけでは根拠にならないことです。「当店のお客様の満足度98%」「皆さん痩せています」といった数字は、無作為に抽出した相当数のサンプルでなければ、客観的な実証とは認められません。第二に、「個人差があります」と小さく書いても、表示全体から受ける印象を打ち消せないことです。表示された効果は、表示全体から一般消費者が受ける印象で判断されます。広告の大きな見出しで「1回で-5cm」と示し、隅に小さく注意書きを付けるだけでは、全体の印象は変わりません。第三に、資料と表示が対応していなければならないことです。たとえば、特定の体型・特定の条件で行った測定の結果を根拠に、「どなたでも」という書き方をすれば、資料と表示が対応しません。
効果の表現の見直しの方向
避けたい「1回で-5cm!必ず痩せる」
見直し施術前後の測定値を載せる場合は、測定した期間・回数・食事や運動の条件を併記し、一例であること、効果は個人差があり保証しないことを、同じ大きさで見やすい位置に書く。根拠資料と対応する範囲の表現にとどめる
効果の断定は、資料と対応しなければ根拠にならない。注意書きだけで打ち消せない
避けたい「小顔になる」「骨格が変わる」
見直し行う施術の内容(手技の流れ、使用する機器、施術時間)を事実のとおり説明する。顔のサイズや骨格が変わると受け取れる表現は使わない
サイズや骨格を変えるという効果は、実証が難しく、人体への侵襲を伴う医療行為と受け取られるおそれもある
避けたい「永久脱毛」「二度と生えない」
見直し「永久」「二度と」を使わず、実際に行う方法(光・機器の種類)、必要な回数の目安、個人差、施術後の経過を説明する
期間を断定する効果表示は実証が難しい。毛乳頭などを破壊する脱毛は医行為とされるため、エステで提供できるのか自体を、先に整理する(脱毛・ハイフと医師法のページ)
避けたい「脂肪を溶かす」「セルライトが消える」
見直し機器による温熱や刺激で何を行うかを書き、脂肪やセルライトが物理的になくなるとは書かない
脂肪を溶かす・減らすという表現は、脂肪溶解注射などの医療行為を連想させる。名称を「ケア」と言い換えても、行為の実質で判断される
避けたい「医療機関と同じ効果」「医師監修の施術」
見直し医師が実際に関与した範囲を、事実のとおり、具体的に書く。関与していない、または名目だけの場合は書かない
特定商取引法施行規則103条3号は、国・地方公共団体・著名な団体や個人の関与を、誇大広告の対象事項に挙げている
メニュー名の付け方も同じです。「○○施術」を「○○ケア」と言い換えるなど、医療を連想させる語を避けるサロンもあります。ただし、名称を変えても、医行為に当たるかどうかや、広告で誤認させるかどうかは、行為の実質と表示全体で判断されます。名称の言い換えは、表現の見直しの一部にすぎません。
ヒヤリングの場面では、メニューごとに、使用する機器・薬剤、医療行為に当たる可能性、施術するスタッフの資格を書き出しておくとよいでしょう。広告の表現を決める前に、行為の実体を棚卸しすることが、順番として先です。
化粧品・美顔器・サプリの効能は、言える範囲が決まっている
サロンで使う化粧品や、ホームケアとして販売する商品については、広告の規制がさらに細かく決まっています。ここでは、薬機法(医薬品医療機器等法)が規制しているのは「物」の広告であることを、整理しておきます。
- 施術(役務)そのものの広告は、主に特定商取引法と景品表示法の対象。
- 施術で使う化粧品、販売するホームケア商品、美顔器、サプリメントについて、名称・効能・効果・性能を説明する広告は、薬機法・健康増進法の対象にもなる。
- メニュー表に「○○配合のピーリング美容液で、シミを薄くします」と書けば、役務の広告であると同時に、化粧品の効能の広告にもなる。
化粧品の効能の範囲(56項目)
薬機法2条3項は、化粧品を、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚・毛髪を健やかに保つために身体に塗擦・散布などで使用される、人体に対する作用が緩和なものと定義しています。同法66条1項は、化粧品を含む医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能について、明示的であるか暗示的であるかを問わず、虚偽または誇大な記事を広告することを禁じています。同条2項は、医師その他の者が効能などを保証したと誤解されるおそれのある記事も、同じ扱いとしています。
化粧品として表現できる効能の範囲は、厚生労働省医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)の別表第1が、56項目で示しています(昭和36年薬発第44号通知の別表第1を、平成12年の通知と、この通知で改正したもの)。肌に関わる主な項目は、次のとおりです。
| 通知の項目 | 言える表現の例 | この範囲を超える表現の例 |
|---|---|---|
| (19)(20) | 肌を整える。肌のキメを整える。 | 毛穴が消える。肌質が変わる。 |
| (22)(23) | 肌荒れを防ぐ。肌をひきしめる。 | 肌荒れが治る。たるみが改善する。リフトアップする。 |
| (24)(25)(28) | 皮膚にうるおいを与える。皮膚の水分、油分を補い保つ。皮膚の乾燥を防ぐ。 | 皮膚の奥の水分量が増える。体質改善で乾燥しなくなる。 |
| (30)(31)(32) | 肌にはりを与える。肌にツヤを与える。肌を滑らかにする。 | 皮膚が再生する。若返る。 |
| (36)(37) | 日やけを防ぐ。日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。 | シミが消える。シミが薄くなる。 |
| (56) | 乾燥による小ジワを目立たなくする。 | シワがなくなる。シワが消える。 |
この通知には、注として、「補い保つ」を「補う」または「保つ」とする、「皮膚」と「肌」を使い分ける、といった言い換えを可とする扱いが書かれています。同じ範囲の中で言葉を整える自由はありますが、範囲に載っていない効能を言うことはできません。「肌をひきしめる」は、肌についての効能です。ボディ用のクリームについて、サイズが減る・体型が引き締まる、という意味に受け取れる表現にすると、別の問題(景品表示法の優良誤認)になります。肌の施術を行わない美容講座の案内でも、化粧品を紹介するなら、効能は定められた範囲を超えない表現にします。
美顔器・美容機器と、サプリメント
医療機器とは、人の疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等で、政令で定めるものです(薬機法2条4項)。美顔器などの機器も、何を目的とする機器としてうたうかによって、医療機器に当たるかどうかが問題になり得ます。承認や認証を受けていない医療機器について、名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告をすることは禁止されています(薬機法68条)。機器を導入するときは、販売元から、承認・認証の有無と、広告で言える範囲を、書面で確認します(機器を導入するときの確認)。販売元の「エステで使える」という説明は、広告の根拠になりません。
サプリメントなど食品として販売する物の広告は、健康増進法65条1項により、健康の保持増進の効果などについて、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示が禁止されています。「飲むだけで痩せる」のような、医薬品のような効能をうたえば、薬機法の問題にもなります。化粧品・サプリ・美顔器をコースとあわせて販売する場合の、返品・クーリング・オフの扱いは、関連商品と物販のページで整理しています。
薬機法の罰則は重く、66条1項または68条に違反した者は、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金に処され、またはこれを併科されます(85条4号・5号)。66条1項に違反する行為をした者には、厚生労働大臣が、対価の額の4.5%の課徴金の納付を命ずる仕組みもあります(75条の5の2。計算した額が225万円未満のときは命じない)。広告をした者であれば、サロンの経営者に限らず、その表示を作った者も問われる法文(「何人も」)です。
実務での注意点:成分や機器を打ち出す商品を扱うときの論点
- 成分を打ち出した美容商品を代理店として販売するときは、薬機法の広告規制が論点になります。販売する側のサロンが、メーカーの資料の効能表現をそのまま広告に使うと、サロン自身が広告をした者として責任を負います。
- 手技を中心にした施術では、「治る」「治療」「改善」といった表現を使わないこと、ビフォーアフターを誇張しないことを、表現の禁止事項として整理しておきます。これらの表現は、医療行為と誤認される表現として避けるべきものです(リラクゼーションメニューのページ)。
ビフォーアフター写真と体験談:掲載の同意と、表示のルール
ビフォーアフター写真は、エステの広告で最も訴求力が強く、最も誤認を生みやすい素材です。法律上の問題は、二つの面に分かれます。広告として事実に反しないか(景品表示法、特定商取引法)と、写真に写る本人の同意と個人情報の取扱いです。
広告として、事実に反しないか
- 撮影の条件(照明、角度、姿勢、化粧の有無、時間帯)が、前後で違っていないか
- 加工や補正をしていないか。加工をしたのであれば、そのことを示しているか
- 施術の期間・回数と、食事や運動の併用などの条件を、写真の近くに書いているか
- 掲載した例が、お客様の典型的な結果なのか、特に結果の良かった例なのか。一部の人の結果を、誰にでも起きるように見せていないか
- お客様の体験談(「○kg減りました」)に、根拠資料があるか(体験談だけでは根拠にならない)
これらは、写真そのものがうそでなくても、表示全体から一般消費者が受ける印象で優良誤認かどうかが判断される、という考え方に基づいています。写真の説明文を、条件を含めて具体的に書くことが、最も有効な予防策です。
写真に写る本人の同意
顔や体の写真は、特定の個人を識別できれば個人情報です。個人情報保護法は、利用目的の特定(17条1項)と、特定した目的の範囲を超えた取扱いの制限(18条1項)を定めています。カウンセリング用に撮った写真を、本人の同意なく広告に使うことはできません。法人向けの福利厚生契約などでも、施術写真・ビフォーアフター・施術風景・感想を、店のSNS・ウェブ・広告に使うのは本人の事前の同意がある場合に限る、とする条項を置く方法があります(サブスク・回数券・法人契約のページ)。同意の取り方を、広告用の同意書に整理すると、次のとおりです。
上の4番目の項目にある第三者の転載は、実務上の盲点です。一度インターネットに載せた写真は、他の人が保存・転載することがあり、サロンが削除を約束できるのは、自分の管理する媒体に限られます。削除の申出への対応は、店が管理する媒体について合理的な期間内に行う、と限定して書くのが現実的です。
口コミの依頼・モニター投稿とステルスマーケティング規制
2023年10月1日から、景品表示法5条3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)が施行されました。事業者が自分の商品・サービスについて行う表示であるのに、広告であることを明瞭にしないために、一般消費者が事業者の表示と分からないものは、不当な表示として禁止されます。
運用基準(令和5年3月28日消費者庁長官決定)は、判断の基準を二つに分けています。第一は、その表示が「事業者の表示」に当たるか。外形上は第三者の表示に見えても、事業者が表示内容の決定に関与したと認められれば、事業者の表示です。第二は、事業者の表示であることが、一般消費者にとって明瞭か、です。
| 場面 | 事業者の表示に当たるか | 考え方 |
|---|---|---|
| サロンが顧客に依頼して、SNSや口コミサイトに、サロンのサービスについて投稿してもらう | 当たる | 事業者が第三者に、第三者のSNS上や口コミサイト上に、自らの商品・役務に係る表示をさせる場合の例に挙がっている |
| 施術を無償で提供して投稿を依頼し、内容はお客様の自由にしてもらう | 当たらないことがある | 客観的な状況から、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、事業者の表示とならない。ただし、事業者の方針や内容に沿った表示になっている場合は当たる |
| 投稿の謝礼に割引券を配る。ただし、投稿の内容に関するやり取りは一切ない | 当たらないことがある | 運用基準は、ECサイトのレビュー投稿への謝礼のクーポンを、投稿内容のやり取りが一切ない場合の例として挙げている。口コミサイトでも同様に考えられる |
| モニター価格と引き換えに、投稿を依頼する | 当たることが多い(筆者の整理) | 対価の提供と、表示の依頼・指示が結び付くため、事業者が表示内容の決定に関与したと認められやすい。運用基準が個別にこの場面を挙げているわけではなく、判断は個別の事情による |
| サービスの販売に関わる部署のスタッフが、販売促進のためにサロンのサービスをSNSで宣伝する | 当たる | 販売促進を目的として従業員が行う表示は、事業者が自ら行う表示に当たる、という整理 |
| サロン自身のウェブサイトの「お客様の声」 | 通常は当たる | 事業者自身のウェブサイトは、通常、事業者の表示であることが明らか。第三者の客観的な意見に見せて、実際はサロンが依頼・作成したものであれば、そのことを明瞭に表示する |
事業者の表示だと認められる場合は、そのことを一般消費者に明瞭に示さなければなりません。運用基準は、明瞭な表示の例として、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言、または「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章を挙げ、これらの文言を使っていても、表示全体から明瞭と認められない場合があるとしています。不明瞭な例としては、表示の末尾に記載する、周囲より小さく書く、大量のハッシュタグの中に埋もれさせる、などが挙がっています。
責任を負うのは、広告主である事業者です。運用基準は、告示の対象を、景品表示法の「事業者」が行う「表示」としており、投稿したお客様個人が、告示の対象になるわけではありません。しかし、サロンが依頼してさせた投稿に、広告であることを示す表示がなければ、サロンの違反になります。違反した場合は、措置命令の対象となります(景品表示法7条1項)。ステルスマーケティングそのものは、課徴金の対象からは外れています(同法8条1項かっこ書)が、同じ表示が優良誤認にも当たれば、課徴金の対象になります。
条文例:モニター・口コミ投稿の依頼に添える条項(例)
第○条(広告である旨の表示)
お客様が、当店の提供する施術について、モニター価格、割引、特典その他の経済上の利益を受けて、SNSやウェブサイトに投稿する場合は、投稿の冒頭の見やすい位置に「広告」「PR」「当店から割引を受けて投稿しています」など、広告であることが分かる表示を付けなければなりません。
第○条(内容)
投稿の内容は、お客様ご自身の体験した事実の範囲とし、施術の効果を保証する表現、医療行為と誤認される表現、当店が認めていない効能の表現を含めないでください。当店は、投稿の内容について、事実に反する部分の訂正をお願いすることがあります。
第○条(掲載の停止)
前二条の定めに反する投稿があったときは、当店は、投稿の修正または削除をお願いすることがあります。
ここでの整理は、モニター価格と引き換えの投稿依頼はステルスマーケティング規制の対象になり得ること、広告である旨の表示を、投稿する側の義務として契約に書くことです。投稿内容を細かく指定するほど、事業者の表示としての性格が強まるため、事実に反する点の訂正にとどめるのが原則です。
スタッフが個人のSNSで店のサービスを発信する場合の、契約の書き方(制限型・許容型)は、エステティシャンの業務委託契約のページで整理しています。フランチャイズの加盟店が広告をする場合は、本部のブランド表示のルールと、加盟店の広告責任がどう分かれるかを、加盟契約で確認します(営業権の譲渡・フランチャイズのページ)。
予約・回数・価格の表示は、契約書と一致させる
広告の表示が、契約書や規約と食い違うと、お客様の期待を裏切るだけでなく、広告そのものが誤認を招く表示になります。エステで食い違いが生じやすい三つの表示を整理します。
「予約が取りやすい」「通い放題」
「いつでも予約が取れます」といった表示は、サロンの予約枠の数、スタッフの人数、繁忙期の予約の埋まり方と、実際に合っていなければなりません。実際は取りにくいのに取りやすいと表示すれば、コースの広告であれば特定商取引法43条の対象になり得ます。表示した根拠として、予約の空き状況の記録を残しておきます。「通い放題」「回数無制限」も同じです。月の利用回数の上限や、同一の施術の回数制限といったルールがあるなら、規約と法定書面の両方に書きます。広告でそのルールを書かずに「通い放題」とだけ書けば、契約書面の内容と食い違い、誤認を招きます。上限や制限は、広告の見やすい位置に書きます。
回数・予約の表示の見直しの方向
避けたい「通い放題」「回数無制限」
見直し月の利用回数の上限、同一の施術の回数制限、予約の取り方(予約枠に限りがあること)を、広告の見やすい位置に書く
契約書面・規約の内容と一致させる。広告だけが無制限に見えると、誤認を招く
避けたい「いつでも予約が取れます」
見直し予約の取りやすさを示すなら、実際の予約の空き状況の記録をもとに、曜日・時間帯の目安を書く。確約はしない
予約の取りやすさは、トラブルの典型的な原因。根拠の記録を残しておく
二重価格、期間限定、初回限定
「通常価格○円のところ、今だけ○円」という二重価格表示は、通常価格が実際に販売されていた価格でなければ、景品表示法5条2号の有利誤認になります。公正取引委員会の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年6月30日、平成14年12月5日改定)は、比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかどうかを、判断の要素にしています。一般的な目安として、価格の表示を行う時点から遡った8週間のうち、その価格で販売されていた期間が過半を占め、通算で2週間以上あり、その価格で最後に販売した日から2週間を経過していないこと、といった整理が示されています。将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示については、消費者庁が令和2年12月25日に執行方針を公表しています。
期間限定、先着の表示も、その期限を過ぎても同じ価格で販売を続ければ、有利誤認の問題になります。期間を示したら、期間を守ります。初回限定価格や体験価格で契約したコースの、中途解約のときの精算の単価は、契約時の単価で行う必要があります(クーリング・オフと中途解約のページ)。体験や初回限定の価格を、勧誘の場面でどう使うかは、体験コース・初回限定価格のページで扱っています。
価格・税の表示
広告に表示する価格は、税込か税別かを明記します。コースの広告では、特定商取引法施行規則103条が、対価、支払の時期と方法、役務の提供期間、解除に関する事項、追加で負担する金銭を、誇大広告の対象事項に挙げています。コースの価格だけを大きく表示して、入会金やオプション料金など、追加で負担する金銭が別にかかることを、目立たない場所にしか書いていなければ、有利誤認を招きます。
広告を出す前の社内ルールと、記録の残し方
広告の違反は、サロンのオーナーの意図しないところで起きます。スタッフが個人のSNSで書いた表現、制作会社が作ったウェブサイトの文言、メーカーの資料をそのまま使ったメニューの説明などです。景品表示法22条1項は、事業者が表示を適正に管理するために必要な体制の整備その他の措置を講じなければならないと定め、同条2項は、内閣総理大臣が指針を定めるとしています。小規模なサロンでも、次の運用を最低限の仕組みとして持っておきます。
広告の公開前チェック
- 効果の表現(痩せる・小顔・脱毛・シミ・シワ)に、根拠資料があり、資料の内容と表現が対応している
- 「個人差があります」だけで、効果の断定を打ち消そうとしていない
- 化粧品・美顔器・サプリの効能が、通知で示された範囲(化粧品の場合)や、承認・認証の範囲を超えていない
- 医療行為と誤認される言葉(治る、治療、改善、医療レベル)や、「医師監修」などの関与の表示が、事実と合っている
- ビフォーアフター写真の撮影条件・加工・期間・併用を書いており、掲載の同意書がある
- お客様の声・口コミは、広告であることが明瞭か、そのままの引用か、恣意的な抽出になっていない
- 「通い放題」「予約が取りやすい」の表示が、規約・契約書面の内容と一致している
- 二重価格の通常価格が、実際に販売していた価格である。期間限定は期限を守っている
| 項目 | 書くこと | 理由 |
|---|---|---|
| 表現と掲載場所 | 表現の文言、掲載したウェブページ・SNS・チラシの名称と日付 | どの表示について聞かれたのかを特定する |
| 根拠資料 | 試験・調査の結果、専門家の見解、メーカーの資料、測定の記録 | 資料の提出を求められたとき、原則として文書で求められた日から15日後が期限(運用指針) |
| 承認者と承認日 | 広告を確認して承認した人と日付 | スタッフや制作会社が独断で公開しないようにする |
| 写真・体験談の同意書 | 同意書の控え、掲載の範囲と期間 | 同意の範囲を超えて使っていないか、削除の申出に対応する |
| モニター・口コミの依頼の記録 | 依頼した相手、提供した利益、広告表示の指示 | ステルスマーケティングに当たらないことを説明する |
違反に気づいたときは、掲載を速やかに取り下げ、修正します。気づきにくいのは、過去のSNS投稿、古いブログ記事、ポータルサイトの掲載ページ、紹介者の記事など、サロンが管理していない場所に残っている表示です。広告の管理台帳には、制作会社やポータルサイトの運営者に渡した原稿も含めて記録し、修正を依頼できるようにしておきます。
実務での注意点:ランディングページと加盟店の広告
- ランディングページの表示を点検するときは、ビフォーアフターの掲載、割引の表示、優良誤認が主な論点になります。ページ全体の印象で、効果や割引の程度が実際より大きく見えないかを点検の軸にします。
- フランチャイズの加盟契約では、ブランド表示・イメージ統一の条を置き、店内外の装飾、チラシ、ウェブ、SNS、接客・服装まで、本部の方針に従い、消費者に誤認や不快感を与えないことを定めることがあります。加盟店の広告の違反が、本部のブランドに及ぶためです。
起きがちなこと:広告でつまずく五つの場面
- 体験談とビフォーアフターだけを根拠に、「必ず痩せる」と書き、資料の提出を求められたときに出せるものがない
- メーカーの資料の効能表現を、そのままメニューやウェブサイトに書き写し、化粧品の効能の範囲を超えている
- 写真の掲載同意を口頭で済ませ、期間や削除の申出の定めがなく、退会後も写真が掲載されたままになっている
- 割引と引き換えに口コミの投稿を依頼したが、広告であることの表示を求めておらず、サロンの表示として扱われる
- 広告では「通い放題」としていたが、契約書面では月の回数と同一施術の回数に上限があり、お客様が食い違いに気づいてから解約を申し出る
どの場面も、広告を出す前に根拠・同意・契約書との一致を確認する担当と手順が決まっていないことが原因です。広告の表現は、法定書面・規約・同意書の内容と同じ土台にあります。規約・プライバシーポリシー・特商法表記の整え方は利用規約・プライバシーポリシーのページ、広告と勧誘の禁止行為の全体像は開業のページ、特定継続的役務提供の該当判断は特定継続的役務提供のページで整理しています。
よくあるご質問
エステの広告で「痩せる」と書いてもよいですか?
効果を断定する表現は、裏付けとなる合理的な根拠がなければ使えません。景品表示法7条2項により、根拠資料の提出を求められ、提出しなければ優良誤認とみなされます。お客様の体験談だけでは根拠にならず、「個人差があります」の注意書きでも、広告全体の印象は打ち消せません。
化粧品の効能として、どこまで書けますか?
厚生労働省の通知(平成23年7月21日薬食発0721第1号)の別表第1にある56項目の範囲までです。たとえば「肌を整える」「肌荒れを防ぐ」「皮膚の乾燥を防ぐ」「乾燥による小ジワを目立たなくする」は範囲内ですが、「シミが消える」「シワがなくなる」は範囲を超えます。虚偽・誇大な広告は薬機法66条1項で禁止されています。
お客様に割引をして口コミを書いてもらうと、ステマになりますか?
事業者が口コミの内容の決定に関与したと認められる場合は、事業者の表示となり、広告であることが分かる表示が必要です。割引と引き換えの依頼は、事業者の表示とされやすく、「広告」「PR」などの表示を投稿する側の義務として、依頼の条件に入れます。投稿の内容にサロンが関与しない場合は、事業者の表示に当たらないことがあります。
ビフォーアフター写真を広告に載せるときの注意点は?
本人の事前の同意(掲載の媒体・期間・削除の申出の方法を含む)を取り、撮影条件・加工の有無・期間・併用した条件を写真の近くに書きます。条件の違う写真を並べたり、特に結果の良い例を典型例のように見せたりすると、景品表示法の優良誤認になります。
「永久脱毛」と広告に書いてもよいですか?
「永久」「二度と生えない」のような期間を断定する効果表示は、実証が難しく、景品表示法の優良誤認になるおそれが高い表現です。そもそも、毛乳頭を破壊する脱毛は医行為とされ、エステで提供できるかどうかの確認が先です。実際に行う方法、回数の目安、個人差を事実のとおり説明します。
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本ページは一般的な情報提供です。個別のサロンに必要な対応は、メニュー、使用する機器、料金の受け取り方、勧誘の方法によって異なります。事務所の作成例・相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたエステサロン・美容施術サービスの契約書、法定書面、規約、同意書、業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 厚生労働省 / 国民生活センター