このページの要点
- エステの特定継続的役務提供は、皮膚の美化・体型・体重のための施術で、期間1か月超・総額5万円超の契約(特定商取引法41条、施行令24条・別表第四)。
- 金額は施術料だけでなく、入会金・カウンセリング料・関連商品の代金も含めた総額で判断する。
- 初日を算入する場合、「4月1日から31日間」は1か月を超える。有効期限の定めがない回数券は、特段の事情がない限り常に1か月超として扱われる。
- 当たれば、概要書面・契約書面、誇大広告と不当な勧誘の禁止、財務書類の備付け、クーリング・オフ、中途解約の上限がすべてかかる。
特定継続的役務提供とは
特定商取引法41条は、身体の美化や知識・技能の向上などの目的を実現させることをもって勧誘が行われ、その目的が実現するかどうかが確実でない役務のうち、政令で定めるものを「特定継続的役務」としています(同条2項)。そのうえで、政令で定める期間を超えて提供することを約束し、政令で定める金額を超える金銭を支払う契約を、特定継続的役務提供契約と定義しています(同条1項1号)。
エステについて、政令(特定商取引法施行令別表第四)は次のように定めています。
| 区分 | 役務の内容 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|---|
| エステティック(一の項) | 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(美容医療に当たるものを除く) | 1か月を超える | 5万円を超える |
| 美容医療(二の項) | 皮膚の美化、体型、体重、歯の漂白のための医学的処置・手術・その他の治療(美容目的で、省令で定める方法によるもの) | 1か月を超える | 5万円を超える |
なお、残りの5つは語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスで、期間はいずれも2か月を超えるものです。エステと美容医療だけが「1か月」と短く設定されています。
該当するかどうかの判断の順番
エステのコースが特定継続的役務提供に当たるか
施術の内容は、皮膚を清潔・美化する、体型を整える、体重を減らすためのものか(フェイシャル、ボディ、痩身、脱毛など)
はい次の問いへ
いいえエステティックとしての特定継続的役務提供には当たらない(リラクゼーションのみ等)
医学的処置として、施行規則91条の方法(光・針による脱毛、光・音波・薬剤・機器によるしみの除去や脂肪の減少など)で行うものか
はい美容医療(二の項)として判断する。中途解約の上限額が異なる
いいえエステティック(一の項)として次の問いへ
契約期間(施術を受けられる期間)が1か月を超えるか
はい次の問いへ
いいえ当たらない。ただし有効期限を定めない回数券や、実質的に1か月を超える取引は注意
お客様が支払う総額が5万円を超えるか(入会金・関連商品の代金なども含めて判断)
はい特定継続的役務提供に当たる
いいえ当たらない。ただし消費者契約法などは別に及ぶ
金額は、施術料だけでなく、入会金や、施術に際して購入する化粧品などの関連商品の代金も含めた、お客様が支払う総額で判断するのが消費者庁の解説の立場です。施術料を4万円台に抑えても、セットで売る化粧品と合わせて5万円を超えれば対象になります。消費者庁の解釈通達でも、入会金、施設利用料、カウンセリング料、役務の提供に際して購入が必要な商品の代金まで含めて判断するとされています。
「1か月」の数え方
エステの期間要件は「1か月を超える」かどうかです。「1か月コース」とうたう店ほど、終わりの日の書き方で結論が変わるので注意が必要です。解釈通達は、期間を初日から数える場合の例として、次のように整理しています。
| 契約期間の書き方 | 1か月を超えるか |
|---|---|
| 1月1日から1月31日まで | 超えない |
| 1月1日から31日間 | 超えない |
| 4月1日から5月1日まで | 超える |
| 4月1日から31日間 | 超える(4月は30日しかないため) |
| 有効期限の定めがない回数券 | 特段の事情がない限り、常に超えるものとして扱う |
| 当初から延長を予定していた、延長の前後が実質的に一体の契約 | 延長後の期間を含めて一体として判断する |
コースを複数用意している場合は、コースごとに判断します。短いコースの後に長いコースへ切り替える場合、その切替えの新しい契約は、改めて要件を満たすかどうかを判断し、満たすなら書面一式が必要です。
メニューと売り方ごとの判断例
| 売り方 | 判断の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 初回体験(1回だけ) | 期間・金額とも満たさないことが多く、通常は当たらない | 体験の当日に本契約を勧める場合、その本契約が対象になる |
| 12回コース・有効期限1年・総額12万円 | 当たる | 概要書面・契約書面・クーリング・オフ・中途解約がすべて必要 |
| 5回券・有効期限3週間・総額6万円 | 期間が1か月以内なので当たらない | 期限内に消化できない設計は、消費者契約法上の争いの種になる |
| 回数券・有効期限なし・総額8万円 | 当たる。通達は、有効期限の定めがないものは特段の事情がない限り期間要件を超えるものとして扱うとしている | 有効期限を書き忘れただけで、特段の事情がない限り「1か月超」になる |
| 月額制・自動更新・月1万円 | 自動更新は1か月契約の集まりではなく、解約まで続く1本の契約と見られる可能性がある。継続利用を前提に総額が5万円を超えるなら、対象と判断されうる | 毎月あらためて申込みと承諾をする純粋な都度契約でない限り、法定書面を整える前提で設計する |
| 月額制・最低6か月の契約・月1万円 | 期間1か月超・総額6万円となり、当たる可能性が高い | 最低期間の縛りがある月額制は、法定書面の対象として設計する |
| コースを2つの契約に分けて、それぞれ4万円台にする | 実態が一体の取引であれば、合算して判断されうる | 規制を避ける目的の分割は、かえって行政処分の対象になりうる |
当たった場合に、事業者が負う義務
| 場面 | 義務の内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 勧誘・契約の前 | 契約の概要を記載した書面(概要書面)を交付 | 特定商取引法42条1項 |
| 契約の締結後 | 遅滞なく、契約内容を明らかにする書面(契約書面)を交付 | 同条2項 |
| 広告 | 役務の内容・効果などについての誇大広告の禁止 | 同法43条 |
| 勧誘 | 不実告知、重要事項の故意の不告知、威迫・困惑の禁止 | 同法44条 |
| 現金等による前払い5万円超 | 財務書類(貸借対照表・損益計算書など)の備付けと閲覧への対応 | 同法45条、施行規則105条 |
| 契約後8日間 | 書面・電磁的記録によるクーリング・オフに応じる | 同法48条 |
| 8日経過後 | 理由を問わない中途解約に応じ、請求できる額は上限まで | 同法49条 |
相談の現場から:該当するかどうかの判断で、実際に検討したこと
- 施術を伴わない美肌のオンライン講座(動画・資料での情報提供と個別サポートのみ)は、期間が半年、金額が十数万円以上でも、エステティックの「施術」がないため特定継続的役務提供には当たらないと判断しました。ただし、対面イベントで肌に触れるケアを講座の一部に加えると、講座全体が施術を行う役務と評価されるおそれがあるため、対面イベントには施術を入れない設計を提案しました。
- 複数の施術と指導を組み合わせたダイエットプログラムでは、依頼者が特定継続的役務提供用の概要書面を先に作っていました。レビューでは、中心となる役務が美容なのか健康増進なのかが不明確なまま書面だけが先行していると指摘し、広告・ホームページ・カウンセリングでの説明内容を確認したうえで法的な位置づけを整理するよう求めました。
- 最初は対象にならない価格帯で開業し、後から対象になるプランを出す「段階導入」は合理的な進め方です。条件は、対象プランの募集を始める前に概要書面と契約書面をそろえておくこと、既存のお客様を対象プランへ移す新しい契約にも書面が必要になることです。
違反があれば、業務改善の指示や業務停止命令などの行政処分の対象になり、悪質な場合は罰則もあります。書面の記載事項が欠けていると、クーリング・オフの8日間が進行しないと解されている点も重要です(詳しくは概要書面・契約書面のページ)。
当たらない場合でも、規制がなくなるわけではない
期間や金額の要件を満たさず特定継続的役務提供に当たらない場合でも、お客様は消費者ですから、消費者契約法が及びます。例えば、キャンセル料や解約時の違約金のうち、同種の契約で生じる平均的な損害の額を超える部分は無効です(消費者契約法9条1項1号)。「一度支払われた料金は理由を問わず返金しない」という条項は、中途で解約したときの精算をめぐって争いになりやすい書き方です。
- ネットで施術の申込み(予約による契約)を受ける場合は、決済の時期にかかわらず、通信販売としての表示義務(特定商取引法11条)
- 回数券などで有効期限が6か月を超える前払いの場合は、資金決済法の前払式支払手段の規制(未使用残高による)
- 自社で分割払いを受ける場合は、割賦販売法
- 広告表示については、景品表示法
美容医療の施術を扱う場合
医療機関が提供する美容医療(施行令別表第四の二の項)も、1か月超・5万円超で特定継続的役務提供の対象です。エステティックとの大きな違いは、中途解約のときに請求できる損害の上限が「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」と、エステ(2万円または契約残額の10%のいずれか低い額)より高く設定されていることです。関連商品の範囲にも、医薬品・医薬部外品(美容目的のもの)が含まれるなど違いがあります。クリニックと提携してメニューを提供するエステサロンは、どちらの区分の契約なのかを契約書の上で明確にしておきます。
法人と契約する場合
福利厚生として、法人が従業員のためにエステのサブスクやチケットを契約する形もあります。事務所が作成した美容施術サブスクの利用規約では、「クーリング・オフは個人の利用者に限り、法人には適用しない」「法人の中途解約は別に締結する法人向け契約書による」と書き分けました。ただし、法人が契約者でも、実際に施術を受けるのは従業員個人です。特定商取引法の適用除外の範囲は個別に確認が必要で、健康状態の申告、施術同意書、写真の掲載同意は、利用者本人から取る構成にしておきます。法人向けの契約の作り方はサブスク・回数券・法人契約のページで解説しています。
事務所の作成例:サブスクを法定書面と一致させる(運用の確認を踏まえた改訂)
個人向けの美容施術サブスク契約書
修正前契約期間は1か月、自動更新
修正後半年を超える一定の月数を契約期間とし、以後は1か月ごとの自動更新。法定書面にも同じ月数の提供期間と、月額にその月数を掛けた支払総額を記載
最低契約期間の総額が5万円を大きく超える以上、特定継続的役務提供として扱うことを前提に、契約書と法定書面の期間・回数・金額を一本化した
オンラインで契約する場合
ホームページや予約システムでコースの申込みと決済を受ける場合も、要件を満たせば特定継続的役務提供に当たります。店頭で契約するか、オンラインで契約するかは、該当するかどうかの判断に影響しません。そのうえで、ウェブ上でコースを販売する広告には、通信販売としての表示(特定商取引法11条)も必要になります。申込みの最終確認画面では、役務の分量(回数・提供期間など)、対価、支払の時期と方法、提供の時期、申込みの期間の定め、解約・解除に関する事項を表示する必要がある点にも注意します(同法12条の6第1項)。
オンラインで契約を受け付けるなら、概要書面を申込みの前に、契約書面を申込みの後に、どの方法で交付するのか(郵送か、承諾を得た電磁的方法か)を、申込みの流れの中に組み込んでおきます。電磁的方法で交付する場合の承諾の手順は、概要書面・契約書面のページで解説しています。
ローン・クレジットを利用する場合
高額なコースでは、お客様が個別クレジット(ショッピングローン)やカードの分割払いを利用することがあります。この場合、サロンとの間で生じた事由(施術が提供されない、契約が解除された等)を、クレジット会社への支払の拒絶の理由として主張できる「抗弁の接続」の仕組みがあり(割賦販売法30条の4、35条の3の19など)、その旨を概要書面・契約書面に記載する必要があります(施行規則92条1項1号リ、93条2項5号)。
- クーリング・オフや中途解約があったときに、クレジット会社への連絡と精算をどの順番で行うかを、社内手順として決めておく
- 個別クレジットを取り次ぐ場合は、クレジット会社の加盟店としての調査や書面の要件にも従う
- 自社で分割払いを受ける(2か月以上・3回以上)場合は、エステは割賦販売法の指定役務に当たるため、自社割賦としての書面や催告のルールが加わる。この場合の中途解約の請求上限は、割賦販売法6条1項による(特定商取引法50条2項)
違反した場合の行政処分
特定継続的役務提供のルールに違反すると、主務大臣(実際には消費者庁や都道府県)による業務改善の指示、業務停止命令、役員などに対する業務禁止命令の対象になり、違反の内容は公表されます(特定商取引法46条以下)。書面の不交付や虚偽の記載、不実告知などには罰則も定められています。エステ・脱毛サロンは、行政処分の公表事例が多い業種の一つです。処分の理由として目立つのは、書面の記載不備、勧誘の際の不実告知や威迫、中途解約に応じない・上限を超える請求をする、といったものです。いずれも、書面と社内ルールを整えておけば防げるものばかりです。
よくあるご質問
エステの特定継続的役務提供の要件は何ですか?
皮膚の美化、体型を整える、体重を減らすための施術で、期間が1か月を超え、お客様が支払う総額が5万円を超える契約です(特定商取引法41条、同法施行令24条・別表第四)。
エステの体験コースは特定継続的役務提供に当たりますか?
1回だけの体験は、期間・金額とも要件を満たさないことが多く、通常は当たりません。ただし、体験の当日に勧めるコースの本契約は、要件を満たせば対象になります。
有効期限のないエステの回数券は対象になりますか?
有効期限の定めがない回数券は、特段の事情がない限り、常に1か月を超えるものとして扱われます(消費者庁の解釈通達)。総額が5万円を超えるなら特定継続的役務提供に当たるため、書面を整えておく必要があります。
エステの月額サブスクは特定継続的役務提供ですか?
縛りのない自動更新の月額制も、継続利用を前提とした1本の契約と見られる可能性があります。最低契約期間が1か月を超え、その間の総額が5万円を超える場合は、対象になる可能性が高くなります。
化粧品とセットで5万円を超える場合も対象ですか?
金額は、入会金や施術に際して購入する関連商品の代金も含めた総額で判断するのが消費者庁の解説の立場です。施術料が5万円以下でも、セットの化粧品と合わせて5万円を超えれば対象になります。
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