このページの要点
- エステの技術を教える講座は、施術を受ける役務ではないため、原則として特定継続的役務提供には当たらない。
- 自社で2か月以上・3回以上に分割して受講料を受け取ると、割賦販売法の自社割賦に当たりうる(技芸又は知識の教授は指定役務)。
- 卒業後の仕事と収入をうたって受講料を受け取ると、業務提供誘引販売取引に当たる可能性があり、書面と20日間のクーリング・オフが必要(特定商取引法51条・58条)。
- 一切返金しない規定は消費者契約法9条1項1号で無効とされるおそれが高い。段階的な返金、計算単位、上限額を定める。
エステの講座は特定継続的役務提供に当たるか
特定継続的役務提供の対象は、政令で定める7つの役務に限られています(特定商取引法施行令別表第四)。エステティックとして対象になるのは、お客様の皮膚の美化などのための「施術を行うこと」です。エステの技術を教える講座は、施術を受ける役務ではなく、語学・学習塾・パソコン・結婚相手紹介のいずれにも当たらないため、期間や金額が大きくても、原則として特定継続的役務提供には当たりません。
エステの講座・スクールにかかる主な法律の判断
講座の中で、受講生自身が美容目的の施術を継続して受ける内容になっているか
はいその部分がエステティックの役務として特定継続的役務提供に当たる可能性がある
いいえ特定継続的役務提供には原則として当たらない
受講料を自社で分割して受け取るか(2か月以上・3回以上)
はい割賦販売法の自社割賦に当たる(技芸又は知識の教授は指定役務に含まれる)
いいえ割賦販売法の自社割賦には当たらない(カード会社の分割は別)
卒業後に仕事を紹介・提供し、収入が得られるとうたって受講料を受け取るか
はい業務提供誘引販売取引に当たる可能性がある(書面・20日間のクーリング・オフ)
いいえ業務提供誘引販売取引には当たらない
ネットで申込み・決済を受けるか
はい通信販売の表示義務(特定商取引法11条)
いいえ対面の契約なら、通信販売の表示義務はない
いずれに当たらない場合でも、受講生は消費者ですから、消費者契約法が及びます。中途で解約したときの返金の定めが、平均的な損害を超えていないかが最大の論点です。
分割払いは割賦販売法に注意
割賦販売法の自社割賦(購入者から2か月以上の期間にわたり、かつ3回以上に分割して代金を受け取ること)は、政令で定める指定役務が対象です(割賦販売法2条1項1号)。この指定役務には、エステや語学のほか、「技芸又は知識の教授」という包括的な項目が含まれているため、エステの技術講座も対象になりえます。特定継続的役務提供の7つの役務とは範囲が違う点に注意が必要です。
| 場面 | ルール |
|---|---|
| 契約のとき | 現金価格、分割の価格、支払の回数・時期など、法定の事項を記載した書面を交付する |
| 支払が遅れたとき | 20日以上の相当な期間を定めて書面で催告し、その期間内に支払われなければ、契約の解除や残金の一括請求ができる(同法5条)。電子メールでの催告で代えられる一般的な根拠はない |
| 遅延損害金 | 支払の遅れに対する遅延損害金の上限は、消費者契約法の年14.6%ではなく、法定利率による(同法6条) |
| 役務の提供開始後の解除 | 請求できる額は、提供済みの役務の対価などに限られ、解約手数料を上乗せする枠はない |
カード会社の分割払いを使ってもらう場合は、自社割賦には当たりません。事務所が修正した整体の高額プログラムの契約書でも、店との個別の分割払いの合意をやめ、分割を希望する場合はカード会社の分割払いを本人の判断で利用する形に改めた例があります。
卒業後の仕事を約束する講座は、業務提供誘引販売取引に注意
「受講後は当サロンの業務委託として仕事を紹介します」「卒業すれば月〇万円の収入が得られます」とうたって受講料を受け取る講座は、特定商取引法の業務提供誘引販売取引に当たる可能性があります(同法51条)。提供される役務(講座)を利用する業務に従事して利益が得られるとして誘引し、受講料などの負担(特定負担)を伴う取引が対象です。
- 契約前の概要書面と、契約後の契約書面の交付が必要になる
- クーリング・オフの期間は、契約書面を受け取った日から20日間(同法58条)
- 広告には、業務提供利益や特定負担に関する表示義務があり、誇大な表示は禁止される
- 収入の見込みを断定的に告げる勧誘は、不実告知の問題になる
卒業生にサロンの仕事を紹介すること自体は問題ありません。ただし、受講の勧誘の材料として収入や仕事の提供をうたう場合は、この取引類型を前提に書類を整えるか、うたい方を改めるかを、募集を始める前に決めておきます。
受講契約書と返金規定
受講契約書で最も争いになるのは、途中でやめた場合の返金です。「理由を問わず一切返金しない」という条項は、平均的な損害を超える部分が無効とされるおそれが高く(消費者契約法9条1項1号)、講座の進み具合に応じた段階的な返金規定が基本になります。
相談の現場から:返金規定で、実際に助言したこと
- 施術を伴わない美肌のオンライン講座で、「未提供の月分の10%を事務手数料として差し引く」という設計を検討しました。10%という水準はエステの中途解約の上限と同じで不合理とまではいえない一方、2万円のような金額の上限がないため、高額プランを早期に解約すると控除が数万円になります。上限額を設けると、規定として格段に強くなると助言しました。
- 同じ講座で、「月」が暦の月なのか、契約日から数える月なのかによって返金額が変わる点も指摘しました。返金の計算に使う単位は、必ず定義します。
- エステの中途解約の上限(2万円または契約残額の10%のいずれか低い額)は特定継続的役務提供にだけ適用される数字で、講座の解約料は消費者契約法の平均的な損害で判断されます。ただし、水準を検討する際の比較材料にはなります。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| カリキュラム | 講義・実習の内容と時間数、対面・オンラインの別、修了の要件 |
| 受講料 | 入学金・受講料・教材費・検定料の内訳、支払方法(分割の有無) |
| 返金 | 講座の進み具合に応じた段階的な返金、返金の計算単位、上限額 |
| 欠席・振替 | 振替の可否と期限、受講期限の延長 |
| 実習 | 受講生どうしの相互練習の同意、一般のモデルへの施術の扱い |
| 教材・動画 | 著作権の帰属、録画・転載・再配布の禁止 |
| 修了証・認定 | 民間の認定であることの明示、認定の取消し事由 |
| 卒業後 | 競業の制限の範囲(設ける場合は狭く)、名称・ロゴの使用 |
医行為に当たる技術は教えない
脱毛やハイフ、ケミカルピーリングなど、医行為に当たりうる技術をエステティシャン向けに教える講座は、受講生が開業後に違法な施術を行うことにつながります。事務所が医療従事者向けの機器講習の契約書類を作成した際も、人体への照射は医師または医師の指示を受けた看護師等に限ること、受講者自身は照射しない見学形式であることを確認してから条文にしました。エステティシャン向けの講座では、医行為に当たらない範囲の技術に限ることを、カリキュラムと受講規約の両方で明らかにしておきます。境界の考え方は脱毛・ハイフと医師法のページで解説しています。
資格・認定の表示
- エステティシャンの資格はすべて民間資格であり、国家資格であるかのような表示(「公認」「国家資格並み」など)は避ける
- 「美容看護師」のように、法律上の資格名でない名称を資格のように表示しない
- 認定の基準、認定を取り消す事由、認定後の更新料の有無を規約に定める
- 卒業生の成功事例を広告に使う場合は、本人の同意と、平均的な結果ではないことの表示に注意する
オンライン講座の個人情報
オンラインで肌の相談を受ける講座では、受講生から肌の写真や体調、服薬の情報を受け取ることがあります。事務所が支援した美容系の講座では、肌の写真が健康に関する申告と結び付く場合は要配慮個人情報と同じように扱うこととし、申込みに使うウェブフォームの冒頭に取得の同意文と必須のチェック欄を置く設計にしました。病歴などの要配慮個人情報は、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければ取得できません(個人情報保護法20条2項)。
実習のモデルと、受講生どうしの練習
エステの講座では、受講生どうしで施術の練習をしたり、一般の方にモデルとして施術を受けてもらったりします。このとき、施術を受ける人の安全と同意の記録が欠かせません。
| 場面 | 決めること |
|---|---|
| 受講生どうしの相互練習 | 施術を受けることへの同意、健康状態の申告、施術を断る基準、事故時の対応 |
| 一般のモデル | モデルとの同意書(施術の内容、受講生が施術すること、講師の監督のもとで行うこと、リスク)、料金の有無 |
| 保険 | 講座の運営者の賠償責任保険が、受講生の施術による事故を補償するか |
| 写真・動画 | 練習の様子を教材や広告に使う場合の、施術を受ける人の同意 |
講師・アシスタントとの契約
講座を自分だけでなく、講師やアシスタントに任せる場合は、講師との業務委託契約も必要です。講座の内容と教材の著作権の帰属、講師が独自に講座を開くことの制限、受講生の個人情報の扱い、講師の都合で講座を休む場合の代講の手配を決めておきます。受講生から見て誰が教えるのかは講座の品質に直結するため、講師の代わりの手配は、運営者が承認した人に限る形にしておくと安心です。
受講生の作品と、卒業後の名称の使用
- 受講中に撮影した施術写真や作品を、講座の広告に使う場合は、受講生と施術を受けた人の両方の同意を取る
- 卒業生が講座の名称やロゴ、認定の名称を使う場合の条件(認定の有効期間、更新、取消し)を定める
- 卒業生が独自に講座を開く場合に、講座の教材や資料をそのまま使うことを禁止する(著作権)
- 卒業後の競業の制限を設けるなら、期間と地域を絞り、受講生の職業選択の自由を不当に制限しない範囲にとどめる
よくあるご質問
エステティシャン養成講座は特定継続的役務提供に当たりますか?
エステの技術を教える講座は、施術を受ける役務ではないため、原則として特定継続的役務提供には当たりません。ただし、受講生自身が美容目的の施術を継続して受ける内容が含まれる場合は、その部分が対象になる可能性があります。
エステスクールの受講料を分割で受け取ってもよいですか?
受け取れますが、自社で2か月以上・3回以上に分ける場合は、割賦販売法の自社割賦に当たる可能性があります。技芸又は知識の教授は指定役務に含まれるため、法定の書面や、書面での催告などのルールを守る必要があります。
卒業後に仕事を紹介すると約束する講座の注意点は?
仕事による収入をうたって受講料を受け取ると、業務提供誘引販売取引に当たる可能性があり、書面の交付と20日間のクーリング・オフが必要になります。募集を始める前に、うたい方と書類を整理します。
エステ講座で「一切返金しない」と定めてもよいですか?
平均的な損害を超える部分は消費者契約法9条1項1号により無効とされるおそれが高いです。講座の進み具合に応じた段階的な返金規定にし、計算の単位と上限額を定めておきます。
脱毛の技術を教える講座を開いてもよいですか?
医行為に当たる脱毛の技術を、医師や看護師以外のエステティシャンに施術させる前提で教えることは、受講生の違法な施術につながります。医行為に当たらない範囲の技術に限ることを、カリキュラムと規約で明らかにします。
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