エステサロンの開業・始め方と、開業前に決める売り方

資格がなくても開業できる一方、特定商取引法の規制が最も強くかかる業種です。内装や機器より先に「何を、どう売るか」を決めます。

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1か月を超え5万円を超えるコースを売った瞬間から、法定書面、クーリング・オフ、中途解約の上限が、すべて法律で決まります。

このページの要点

  • エステの施術そのものに国家資格は不要。ただし顔そりは理容師法、メイクやまつ毛は美容師法、脱毛やケミカルピーリングなどは医師法の対象になる。
  • 規制は「売り方」で変わる。都度払い、回数券、1か月超・5万円超のコース、月額制、物販、分割払いのどれに当たるかを表にしてから準備する。
  • 現金などで5万円を超える前払いを受けるなら、財務書類(貸借対照表・損益計算書など)を事務所に備え置く(特定商取引法45条、施行規則105条)。
  • 広告と勧誘で、効果の断定、予約の取りやすさの誇張、解約できないという説明は禁止。違反した勧誘による契約はお客様が取り消せる(同法49条の2)。
エステサロンは、国家資格がなくても開業できます。一方で、特定商取引法の規制が最も強くかかる業種の一つでもあります。1か月を超え5万円を超えるコースを売った瞬間から、契約前と契約後の法定書面、8日間のクーリング・オフ、いつでも認められる中途解約と返金の上限が、すべて法律で決まります。エステの開業準備は、内装や機器より先に「何を、どう売るか」を決めるところから始まります。

エステの開業に資格や届出は必要か

フェイシャルやボディのトリートメント、痩身のための施術そのものを行うのに、国家資格は求められていません。エステティシャンの資格はいずれも民間の団体が認定するもので、技術や知識を示す目安という位置づけです。個人で開業する場合は、税務署への開業届の提出が必要です(所得税法229条)。

ただし、エステの名前で提供されることがあるメニューの中には、別の法律の資格が必要なものが混じっています。開業前に、メニュー表を一つずつ確認します。

エステサロンのメニューと、関係する資格
メニュー関係する法律確認すること
フェイシャル・ボディトリートメント、痩身国家資格の定めはない機器を使う場合は、出力や施術方法が医行為にならないか
顔そり(カミソリを使うもの)理容師法(顔そりは理容の業務とされる)カミソリを使うシェービングは理容師の業務に当たるため、エステのメニューとして提供しない
メイク(化粧)、まつ毛エクステンション美容師法(化粧等の方法で容姿を美しくすることは美容)メイクを業として行う、まつ毛の施術を併設する場合は、美容師免許と美容所の届出
マッサージと称する施術あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律1条「マッサージ」「指圧」と表示しない。施術内容が免許の必要な行為に当たらないか
脱毛、ケミカルピーリング、アートメイク、ハイフ医師法17条毛乳頭の破壊など医行為に当たる施術は医師しか行えない。詳しくは脱毛・ハイフと医師法のページ

エステは「売り方」で規制が変わる

同じフェイシャルでも、1回ずつ料金を受け取るのか、回数券やコースで先に受け取るのか、月額で受け取るのかによって、かかる法律がまったく変わります。エステサロンの開業準備では、この「売り方」の表を最初に作ります。

エステの売り方と、主にかかる規制
売り方主にかかる規制準備する書類
1回ごとの都度払い消費者契約法(キャンセル料の上限など)予約・キャンセルの規約、施術同意書
期間1か月以内、または総額5万円以下の回数券・コース消費者契約法。有効期限が6か月を超える回数券は資金決済法の前払式支払手段に当たる場合があるコース申込書、規約
1か月を超え、総額5万円を超えるコース特定商取引法の特定継続的役務提供(書面・クーリング・オフ・中途解約・広告・勧誘)概要書面、契約書面、関連商品の明細
月額制(サブスク)最低契約期間と総額によっては特定継続的役務提供利用規約、最低期間付きなら法定書面
ホームケア商品・美顔器の販売コースとセットなら関連商品として特定商取引法、ネット販売なら通信販売の表示義務契約書面の関連商品欄、特定商取引法に基づく表記
自社での分割払い、ローンの取次ぎ割賦販売法分割払いの条件を示す書面、抗弁の接続に関する記載

表の3行目に当たるかどうかの判断と、当たった場合に何が必要になるかは、特定継続的役務提供のページで詳しく解説しています。

相談の現場から:メニュー表を作る前に、機器と行為を棚卸しする

  • 事務所が美容施術サブスクの書類一式を作成したときは、作成前のヒヤリングシートで、メニューごとに「使用する機器・薬剤」「医療行為に該当する可能性の有無」「施術するスタッフの資格」「想定される施術リスク」を一行ずつ書き出していただきました。この欄が埋まらないうちは、規約も同意書も書き始めません。
  • 光を使う施術、脱毛、プラズマ、毛穴の吸引など、同じ「ケア」の名前でも、使う機器と出力によって法律上の扱いが変わります。名称を「施術」から「ケア」に言い換えても、行為の実質で判断される点は変わりません。
  • 整体・鍼灸・リラクゼーションの店でも、痩身や美肌を目的にした施術をコースで売れば、エステとしての規制がかかる場合があります。反対に、肩こりの緩和を目的とする整体のコースを、エステの法定書面で固める必要はありません。目的と施術の中身で判断します。

開業前に決める「コースの設計図」

コースの組み方は、売上だけでなく、法定書面の書き方、中途解約の精算、スタッフの歩合の計算まで決めてしまいます。開業前に、少なくとも次の項目を一枚にまとめておきます。

コースの設計図に書くこと
項目決めること後で効いてくる場面
施術の種類と回数1回あたりの時間、施術の内容、回数の総計契約書面の「役務の種類」「回数の総計」
期間契約期間(有効期限)を何か月にするか特定継続的役務提供の期間要件、未消化分の扱い
料金の内訳入会金・施術料・関連商品を費目ごとに契約書面の費目明細、中途解約の精算
1回あたりの単価コース料金を回数で割った単価中途解約で「提供済みの役務の対価」を計算する基準
キャンペーン価格割引の条件と、割引後の単価割引前の高い単価で精算する書き方は認められない
支払方法一括・自社分割・カード・ローン割賦販売法、前受金の保全、財務書類の備付け(現金等で5万円超を前受けする場合)
ホームケア商品セット販売か、任意の購入か関連商品としてのクーリング・オフ・中途解約

前払いで5万円を超えるなら、財務書類を店に備え置く

特定継続的役務提供に当たる取引で、施術を始める前にお客様から5万円を超える金銭を現金や口座振替などで受け取る場合(前払取引。クレジットカードや個別クレジットの立替払いは含まれません)は、事業者の業務と財産の状況を記載した書類を、契約の業務を行う事務所に備え置かなければなりません(特定商取引法45条1項、同法施行令27条)。お客様はその書類の閲覧や謄本の交付を求めることができます(同条2項)。備え置く書類は、貸借対照表・損益計算書・事業報告書(個人事業者はこれに準ずる書類)で、事業年度経過後3か月以内に作成し、3年間保管します(同法施行規則105条)。

あわせて、概要書面と契約書面には、前受金について保全措置を講じているかどうか、講じている場合はその内容を記載する必要があります(同法施行規則92条1項1号ヌ・93条2項6号)。保全措置を講じていない場合も「講じていない」と書かなければならない点が、開業時に見落とされやすいところです。

広告と勧誘で、してはいけないこと

エステの広告は、効果をうたう表現が中心になりやすい分、規制も重なります。特定継続的役務提供に当たるコースの広告では、役務の内容や効果について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示が禁止されています(特定商取引法43条)。あわせて、一般消費者向けの表示として景品表示法の不当表示(同法5条)の規制も及びます。

  • 「必ず痩せる」「1回でシミが消える」など、効果を断定する表現
  • 根拠のない「〇kg減」「〇cm減」の数字や、条件の異なる写真を並べたビフォーアフター
  • 期間を区切らない「今だけ半額」や、実際には存在しない通常価格との二重価格
  • 「医療脱毛と同じ効果」など、医療と同等であるかのような表現
  • ホームケア化粧品について、化粧品として認められる効能の範囲を超える表現(医薬品医療機器等法66条)

勧誘の場面では、効果や料金、解約の条件について事実と違うことを告げること、重要な事項を故意に告げないこと、威迫して困惑させることが禁止されています(特定商取引法44条)。「今日契約しないとこの価格は二度と出せない」「解約はできない」といった言葉は、事実と異なれば、そのまま不実告知に当たります。スタッフ向けのトーク集を作るときは、この条文を横に置いて点検します。

消費者庁の解釈通達(特定商取引に関する法律等の施行について)には、エステで問題になる言動の例として、実際には予約が取りにくいのに「いつでも希望の時間に必ず予約が取れます」と告げること、「このままではお肌がボロボロになってしまう」と契約の必要性を偽ること、「店舗での契約なのでクーリング・オフはできない」と説明すること、無料体験の最中に衣服を脱いだ状態で複数のスタッフが取り囲んで勧誘すること、などが挙げられています。事実と違うことを告げたり、重要な事項を故意に告げなかったりして結ばれた契約は、お客様が取り消すことができます(特定商取引法49条の2)。効果や予約の取りやすさについて、行政から根拠となる資料の提出を求められ、提出できなければ、行政処分(指示・業務停止命令)の適用上、誇大広告や不実告知をしたものとみなされます(同法43条の2・44条の2)。

事務所の作成例:広告と契約書を一致させる

体質改善をうたうダイエットプログラム(レビュー)

修正前契約書面に「効果には個人差があります」とだけ記載。広告やカウンセリングでは減量効果を前面に出していた

修正後体重の減少や目標体重への到達を保証しないこと、医療契約ではないこと、食事管理など本人の取組みが必要なことを、契約書面に具体的に記載するよう提案

名称と広告で効果を期待させる以上、「個人差」の一言では足りない。契約書で効果を否定しても、広告で保証していれば意味がないため

脂肪冷却を組み合わせた申込契約書

修正前「機器を用いた非医療的冷却施術」

修正後「冷却施術」

「非医療的」と自称しても、医療に当たるかどうかは行為の実質で決まる。表現で安全を装う書き方を避けた

健康に関する情報の扱い

エステのカウンセリングでは、持病、服薬、妊娠、アレルギー、手術歴など、健康に関わる情報を多く聞き取ります。病歴は個人情報保護法の「要配慮個人情報」に当たり(同法2条3項)、取得するには原則としてあらかじめ本人の同意が必要です(同法20条2項)。カウンセリングシートに同意の欄を設け、プライバシーポリシーに利用目的(施術の可否の判断、安全な施術の提供)を書いておきます。

開業時にそろえる書類

エステサロンの開業時に用意する書類
書類必要になる場面主な根拠
概要書面1か月超・5万円超のコースを勧めるとき(契約前に交付)特定商取引法42条1項、施行規則92条
契約書面(コース契約書)上記のコースを契約したとき(遅滞なく交付)特定商取引法42条2項、施行規則93条・94条
カウンセリングシート・施術同意書すべての施術安全配慮、要配慮個人情報の同意
予約・キャンセルの規約すべての予約消費者契約法9条1項1号
特定商取引法に基づく表記ネットでの施術の申込み(決済の時期を問わない)、商品のネット販売特定商取引法11条
プライバシーポリシー顧客情報・健康情報・写真の取扱い個人情報保護法
スタッフとの契約書雇用・業務委託労働法令、フリーランス法
前払取引の財務書類(貸借対照表・損益計算書など)現金等で5万円を超える前払いを受けるとき特定商取引法45条、施行規則105条

概要書面と契約書面の記載事項は概要書面・契約書面のページ、クーリング・オフと中途解約はクーリング・オフと中途解約のページで整理しています。

自宅サロン・出張エステで気をつけること

自宅の一室でエステサロンを開く場合も、規制の中身は店舗と変わりません。そのうえで、自宅ならではの論点があります。概要書面・契約書面や特定商取引法に基づく表記には事業者の住所を記載する必要があるため、自宅の住所をどこまで公開するかを、開業前に決めておきます。マンションでは、管理規約で事業利用が制限されていないか、来客や機器の騒音について近隣とのトラブルにならないかも確認します。

お客様の自宅に出向いて施術する出張エステでは、お客様の自宅で契約を結ぶと、店舗以外の場所での契約として、特定商取引法の訪問販売の規制が重なる場合があります。訪問販売に当たると、契約の申込み時・締結時の書面の交付や8日間のクーリング・オフなど、訪問販売としてのルールも問題になります。出張の際にその場でコースを契約するのか、店舗やオンラインで契約を済ませてから出張するのかで、整える書類が変わります。なお、お客様から自宅での施術の契約を求められて訪問し、その施術の契約を結ぶ場合は、訪問販売の書面・クーリング・オフの規定は適用されませんが(同法26条6項1号)、訪問先で別のコースを勧めて契約する場合はこの例外に当たりません。

開業の形ごとに追加で確認すること
開業の形追加で確認すること
自宅サロン住所の公開範囲、管理規約・賃貸借契約の事業利用の可否、近隣への配慮、駐車場
テナント店舗賃貸借契約の使用目的(エステとしての使用)、内装・機器の電気容量、看板の表示
出張エステ契約を結ぶ場所(訪問販売の規制)、施術場所の衛生、機器の持込み、移動中の事故
シェアサロン・レンタルサロン利用契約での施術の範囲、機器の持込みの可否、事故時の責任の分担
医療機関との提携美容医療とエステの区分、提携先の医師の関与の範囲、広告の表示

開業準備の順番

エステサロンの開業準備は、書類を作る順番を間違えると、作り直しが何度も発生します。事務所でご依頼をお受けするときは、次の順番で整理しています。

エステサロンの開業準備の順番
順番決めること・作るものこの段階で確認する法律
1メニュー表(施術の内容、使用する機器・薬剤、施術者の資格)医師法、理容師法、美容師法、あん摩マッサージ指圧師等法
2売り方の表(都度・回数券・コース・月額・物販・分割)特定商取引法、資金決済法、割賦販売法
3コースの設計図(期間・回数・単価・費目・関連商品)特定商取引法41条・施行令別表第四・第五
4概要書面・契約書面特定商取引法42条、施行規則92条〜99条
5予約・キャンセルの規約、施術同意書、カウンセリングシート消費者契約法、個人情報保護法
6ホームページ・広告・特定商取引法に基づく表記特定商取引法11条・43条、景品表示法、医薬品医療機器等法
7スタッフとの契約、勧誘のトーク集労働法令、フリーランス法、特定商取引法44条

メニュー表と売り方の表が固まらないうちに規約や同意書を作り始めると、メニューの変更のたびに書類がずれていきます。最初の2つの表に時間をかけることが、結果として最も早い開業準備になります。

よくあるご質問

エステサロンを開業するのに資格は必要ですか?

フェイシャルやボディのトリートメントを行うのに国家資格は求められていません。ただし、カミソリを使う顔そりは理容師法、メイクやまつ毛エクステンションは美容師法、脱毛やケミカルピーリングなど医行為に当たる施術は医師法の対象になります。個人で開業する場合は、税務署への開業届も必要です。

エステのコースを売る前に、何を準備すればよいですか?

まず、コースの期間と総額が特定継続的役務提供(1か月超・5万円超)に当たるかを確認します。当たる場合は、契約前に交付する概要書面と、契約後に交付する契約書面を用意し、クーリング・オフと中途解約の精算方法を決めておく必要があります。

エステの広告で「痩せる」と書いてもよいですか?

効果を断定する表現や、根拠のない数値・ビフォーアフターは、特定商取引法43条の誇大広告や景品表示法の不当表示に当たるおそれがあります。効果には個人差があることを前提に、事実に基づく表現にとどめます。

自宅でエステサロンを開いても、特定商取引法は関係ありますか?

関係します。店の規模や場所にかかわらず、1か月を超え総額5万円を超えるコースを契約すれば、特定継続的役務提供の規制がかかります。

カウンセリングで病歴を聞くときの注意点は?

病歴は要配慮個人情報に当たるため、取得には原則として本人の同意が必要です。カウンセリングシートに同意欄を設け、利用目的をプライバシーポリシーに書いておきます。

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