エステのクーリング・オフと中途解約、返金額の計算

契約直後のクーリング・オフと、その後いつでも認められる中途解約。どちらもお客様に不利な特約は無効です。

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解約のときだけ「通常料金」で使用済み分を計算する定めは、無効とされます。精算は契約時の単価で行います。

このページの要点

  • クーリング・オフは契約書面の受領から8日以内。通知を発した時に効力が生じ、すでに行った施術の対価も請求できない(特定商取引法48条)。
  • 中途解約で請求できる上限は、施術開始前は2万円、開始後は提供済みの対価+「2万円と契約残額の10%のいずれか低い額」(同法49条、施行令別表第四)。
  • 提供済みの対価は契約時の単価で計算する(語学教室について最高裁平成19年4月3日判決)。特別価格で契約したなら特別価格で精算する。
  • 関連商品もあわせて解除できる。通知を受けたら、受付記録→区分判断→計算→商品の仕分け→決済取消し→返金の順で対応する。
エステのコース契約には、契約直後の「クーリング・オフ」と、その後いつでも認められる「中途解約」という、2段階の解約の仕組みがあります。どちらも、お客様に不利な特約は無効です。サロンにできるのは、法律の枠の中で精算のルールをあらかじめ明確にしておくことだけです。このページでは、2つの仕組みの違いと、中途解約で請求できる金額の上限を、計算例を使って整理します。

クーリング・オフと中途解約の違い

クーリング・オフと中途解約
項目クーリング・オフ中途解約
できる期間契約書面を受け取った日から8日以内8日を経過した後、契約期間中いつでも
理由不要不要
方法書面または電磁的記録(メールなど)法律上の方式の定めはない(契約で合理的な方法を決める)
効力通知を発した時(発信主義)将来に向かって解除
サロンが請求できるものなし(すでに受けた施術の対価も請求できない)提供済みの施術の対価と、法定の上限までの損害
関連商品あわせて解除できる(一部の消耗品を除く)あわせて解除できる(返還の有無で精算額が変わる)
根拠特定商取引法48条同法49条

クーリング・オフの仕組み

お客様は、契約書面を受け取った日から数えて8日を経過するまで、書面または電磁的記録で契約を解除できます(特定商取引法48条1項)。解除は通知を発した時に効力を生じ(同条3項)、サロンは損害賠償や違約金を請求できません(同条4項)。すでに施術を行っていても、その対価を請求することはできず(同条6項)、受け取った金銭は速やかに返還しなければなりません(同条7項)。

サロンが解除について事実と違うことを告げたり、威迫したりして、お客様が8日以内に解除しなかった場合は、サロンが改めて解除できる旨を記載した書面を交付し、お客様がそれを受け取った日から8日を経過するまで、解除できます(同条1項括弧書)。「施術を受けたらクーリング・オフはできない」「化粧品を開けたらコースも解約できない」といった説明は、そのまま妨害に当たります。

中途解約の仕組みと、請求できる額の上限

8日を経過した後も、お客様は将来に向かって、理由を問わず契約を解除できます(特定商取引法49条1項)。このときサロンが請求できる金額は、損害賠償額の予定や違約金の定めがあっても、次の上限に法定利率による遅延損害金を加えた額までです(同条2項、同法施行令30条・31条、別表第四の一の項)。

エステの中途解約で請求できる額の上限
解除の時期請求できる額の上限
施術の提供を始める前2万円(契約の締結と履行のために通常要する費用)
施術の提供を始めた後提供済みの施術の対価に相当する額 + 「2万円」と「契約残額の10%」のいずれか低い額

ここでいう契約残額は、契約の対価の総額から、提供済みの施術の対価を差し引いた額です(施行令別表第四の一の項)。美容医療(二の項)の場合は、施術開始後の損害の上限が「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」となり、エステより高くなります。

計算例:12回コース・総額12万円・4回受けて解約

契約の対価の総額120,000円(1回あたり10,000円)
提供済みの施術の対価10,000円 × 4回 = 40,000円
契約残額120,000円 − 40,000円 = 80,000円
損害の上限2万円と、80,000円の10%(8,000円)のいずれか低い額 = 8,000円
請求できる上限40,000円 + 8,000円 = 48,000円

すでに全額を受け取っている場合の返金額:120,000円 − 48,000円 = 72,000円

計算例:24回コース・総額30万円・2回受けて解約

契約の対価の総額300,000円(1回あたり12,500円)
提供済みの施術の対価12,500円 × 2回 = 25,000円
契約残額300,000円 − 25,000円 = 275,000円
損害の上限2万円と、275,000円の10%(27,500円)のいずれか低い額 = 20,000円
請求できる上限25,000円 + 20,000円 = 45,000円

すでに全額を受け取っている場合の返金額:300,000円 − 45,000円 = 255,000円

いずれの例も、関連商品がなく、遅延損害金を考慮しない場合の単純化した計算です。

「提供済みの施術の対価」は、契約時の単価で計算する

中途解約の精算で最も争いになるのが、提供済みの施術の対価をいくらで計算するかです。キャンペーンで1回あたりの単価を下げてコースを売り、解約のときだけ「1回あたりの通常料金」で使用済み分を計算すると、返金額が大きく減ります。特定継続的役務提供(語学教室)について、最高裁平成19年4月3日判決は、契約時の単価より高い単価で使用済み分を計算する定めは、特定商取引法49条の趣旨に反し無効であると判断しました。

エステでも同じ考え方が当てはまります。契約書面には、提供済みの施術の対価の精算方法を記載する必要があり(施行規則94条1項の表の三ロ)、その方法は契約時の単価を基準にしておくのが基本です。回数によって単価が変わる段階制の料金にする場合も、解約時に不当に高い単価を当てはめる設計になっていないかを確認します。

消費者庁の解釈通達も、通常価格1回1万円のエステを期間限定の特別価格1回3千円で契約した場合は、3千円の単価で精算すると例示しています。解約のときだけ適用される高い単価の定めは、実質的な違約金として無効とされます。また、月単位で対価を計算する場合は1か月以下の単位で、回数で計算する場合は原則として1回単位で精算するとされています。キャンペーン価格やモニター価格でコースを売る店ほど、影響が大きい論点です。

相談の現場から:精算の根拠を、契約書面の中に置く

  • 高額ダイエットプログラムのレビューでは、提供済みの役務の対価が具体的にいくらで、どう計算するのかが契約書面に書かれていませんでした。精算用の単価表が別に存在していても、契約書面に組み込まれていなければ「契約時に説明されていない」と主張されます。単価表を契約書面の別紙にし、本文に「別紙の単価表に基づき精算する」と書き、お客様に確認の署名をいただく運用を提案しました。
  • 同じレビューで、検査費用が「関連商品代(実費)」とだけ書かれていた点も指摘しました。キットの発注時、検体の提出時、結果の通知時のどの時点で「提供済み」とするかを決めておかないと、精算で争いになります。エステでも、カウンセリング料、初回の肌診断、ホームケアキットなど「最初に消化される費用」の提供済みの時点を書いておきます。
  • 事務所が作成した美容サブスクの法定書面では、「(コースの月額÷月間の提供回数)×利用回数=提供済みの役務の対価」「支払済みの額−提供済みの役務の対価=未提供分」という計算式を、そのまま書面に掲げました。

関連商品も、あわせて解除できる

サロンがコースとあわせて関連商品(化粧品、健康食品、下着、美顔器など)を販売している場合は、クーリング・オフでも中途解約でも、お客様は関連商品の販売契約もあわせて解除できます(特定商取引法48条2項、49条5項)。

関連商品を解除した場合の扱い
場面扱い
クーリング・オフ損害賠償・違約金は請求できず、引取りの費用は販売した者の負担、代金は全額返す。ただし健康食品・化粧品・石けん・浴用剤を、お客様が自分で使用・消費した場合は、その旨を契約書面に記載していれば解除の対象外(サロンが使わせた場合を除く)
中途解約・商品を返還した場合通常の使用料に相当する額(販売価格から返還時の価格を差し引いた額がそれを超えるときは、その額)まで請求できる
中途解約・商品を返還しない場合販売価格に相当する額まで請求できる
中途解約・商品の引渡し前契約の締結と履行のために通常要する費用まで

関連商品の範囲と、物販の書き方については関連商品・物販のページで詳しく解説しています。

クーリング・オフや解約の通知が届いたら

お客様向けの解説記事は「どう通知するか」を説明しますが、サロンにとって大切なのは、通知を受け取った後の手順です。受付から返金までを、次の順番で社内ルールにしておきます。

通知を受け取った後の社内手順
順番確認・対応すること
1. 受付の記録受け取った日時、方法(郵便・メール・LINE)、発信日(消印・送信日時)を記録する。クーリング・オフは発信した時に効力を生じる
2. 区分の判断契約書面の受領日から8日以内ならクーリング・オフ、それ以降なら中途解約。書面に不備があれば、8日を過ぎていてもクーリング・オフになりうる
3. 金額の計算クーリング・オフなら全額返還。中途解約なら契約時の単価で提供済みの対価を計算し、法定の上限と比べる
4. 関連商品返品を受け付ける商品と、使用・消費により対象外となる消耗品(契約書面に記載がある場合)を仕分ける
5. 決済の取消しカード決済なら決済代行会社への取消しの依頼、ローンならクレジット会社への連絡
6. 返金と通知返金額の内訳をお客様に書面またはメールで示し、速やかに返金する。やり取りはすべて保存する

サロン側で決めておく精算のルール

  • 中途解約の申出の方法(書面、メール、専用フォームなど)と受付窓口。電話だけに限定しない
  • 提供済みの施術の数え方(予約の当日キャンセルを1回消化とするか、その条件)
  • キャンペーン割引や無料の追加施術がある場合の、精算上の単価の扱い
  • 返金の期限と方法(振込手数料の負担を含む)
  • ローンを利用している場合の、クレジット会社への連絡と精算の流れ
  • 有効期限が過ぎた後の未消化分の扱い(期限の長さと説明の仕方を含む)

事務所の作成例:回数を消化させない場面を、先に決めておく(運用の確認を踏まえた改訂)

脂肪冷却を組み合わせた申込契約書

修正前定めなし

修正後スタッフが当日の体調などから安全上の懸念があると判断して施術を途中で中止・制限した場合は、1回分を消化扱いにしない

安全のための中止で、お客様に回数を失わせない。中止をためらわない運用につながる

福利厚生型の施術契約

修正前通信やLINEの障害で手続ができなくても店は責任を負わない

修正後利用者の責めによらない障害で当日までに連絡できず、合理的な資料で証明したときは1回消化扱いにしない

一律の免責は、法人との間でも合理性を争われやすく、契約当事者でない利用者個人からの責任追及も防げないため

これらはすべて、お客様に不利にならない範囲でしか定められません。クーリング・オフに関する規定(特定商取引法48条8項)も、中途解約に関する規定(同法49条7項)も、反する特約でお客様に不利なものは無効です。

施術を始める前に解約された場合

契約書面を受け取ってから8日を過ぎ、まだ1回も施術を受けていない段階で解約された場合、請求できるのは「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」として2万円が上限です(特定商取引法49条2項2号、施行令別表第四の一の項)。

計算例:12回コース12万円を、施術開始前(契約から10日目)に解約

区分8日経過後・施術開始前の中途解約
請求できる上限2万円(法定利率による遅延損害金を除く)
受け取っていた額120,000円

返金額:120,000円 − 20,000円 = 100,000円

関連商品を同時に購入している場合は、関連商品の扱いを別に精算します。2万円は上限であり、実際に生じた費用がそれより少なければ、その範囲で請求するのが筋です。

有効期限が過ぎた後の未消化分

コースの有効期限が過ぎ、回数が残っている場合の扱いも、事前に決めておきたいところです。有効期限を定めること自体は認められますが、期限内に消化することが難しい回数や期限の設定、予約が取りにくい運営のもとでの期限切れによる失効は、消費者契約法上の争いの種になります。期限の長さを通える頻度から逆算して決める、期限が近づいたら知らせる、店の都合で予約が取れなかった期間は期限を延長する、といった運用を規約に書いておくと、トラブルを大きく減らせます。

クーリング・オフ・中途解約・取消しの関係

お客様がとりうる手段の比較
手段要件効果
クーリング・オフ契約書面の受領から8日以内(書面不備なら期間が進行しない)契約は最初からなかったことになり、全額返還。提供済みの対価も請求できない
中途解約8日経過後、理由を問わずいつでも将来に向かって解除。法定の上限まで請求できる
取消し勧誘の際の不実告知・故意の不告知により誤認して契約した(特定商取引法49条の2)、消費者契約法の取消事由に当たる契約は最初から無効となり、受け取った金銭の返還が問題になる

中途解約の申出があっても、その実質がクーリング・オフ(書面不備で期間が進行していない)や取消しに当たる場合は、精算の結果が大きく変わります。通知の文面だけで判断せず、書面と勧誘の経緯を確認してから対応します。

よくあるご質問

エステのクーリング・オフは何日以内ですか?

契約書面を受け取った日から数えて8日以内です。書面またはメールなどの電磁的記録で通知し、通知を発した時に効力が生じます。サロンは、すでに行った施術の対価も請求できません。

エステを中途解約したときの違約金の上限はいくらですか?

施術を始める前なら2万円、始めた後なら「提供済みの施術の対価」に「2万円と契約残額の10%のいずれか低い額」を加えた額が上限です(特定商取引法49条、同法施行令別表第四)。

中途解約のとき、使った分は通常料金で計算してもよいですか?

契約時の単価より高い単価で使用済み分を計算する定めは、特定商取引法49条の趣旨に反し無効とされる可能性が高いです(語学教室について最高裁平成19年4月3日判決)。契約時の単価を基準にします。

化粧品を開封した場合でも、クーリング・オフできますか?

健康食品・化粧品・石けん・浴用剤をお客様が自分で使用・消費した場合は、その旨を契約書面に赤枠・赤字で記載していれば、その商品は解除の対象外にできます。サロンが使わせた場合は対象外にできません。コース自体のクーリング・オフには影響しません。

「クーリング・オフはできません」と書いた契約書は有効ですか?

無効です。特定商取引法のクーリング・オフ・中途解約の規定に反する特約で、お客様に不利なものは無効とされています(48条8項・49条7項)。そのような説明は、解除の妨害として行政処分の対象にもなります。

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