エステの概要書面・契約書面の作り方

省令が求める項目を、求められる書き方で、決められた大きさの文字で記載する。一般の契約書とは作り方が違います。

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契約書面に不備があると、クーリング・オフの8日間が進行しません。何か月も後に、全額の返金を求められることがあります。

このページの要点

  • 概要書面は契約前、契約書面は契約後遅滞なく交付する。契約前に1枚を渡しただけでは契約書面を交付したことにならない。
  • 契約書面には、回数の総計、担当者の氏名、締結年月日、費目ごとの明細と合計、中途解約の精算方法を記載する(施行規則93条・94条)。
  • 書面の内容を十分に読むべき旨とクーリング・オフの事項は赤枠・赤字、文字は8ポイント以上。
  • 電子交付には、提供方法の提示、説明、確認、本人による承諾の記入、承諾を証する書面の交付という手順が必要(施行規則99条)。
特定継続的役務提供では、契約の前と後に、記載事項が細かく決められた2種類の書面を交付する義務があります。一般の契約書のように「当事者が合意した内容を書けばよい」のではなく、省令が求める項目を、求められる書き方で、決められた大きさの文字で記載しなければなりません。このページでは、エステのコース契約で必要な概要書面と契約書面を、施行規則の条文に沿って整理します。

2つの書面の違い

概要書面と契約書面
項目概要書面契約書面
交付する時期契約を締結するまでに(勧誘の段階)契約を締結したとき、遅滞なく
役割契約するかどうかを判断するための説明成立した契約の内容の証明。クーリング・オフの起算点
根拠特定商取引法42条1項、施行規則92条特定商取引法42条2項、施行規則93条・94条
金額の書き方支払う金銭の概算額費目ごとの明細とその合計
赤枠・赤字書面の内容を十分に読むべき旨書面の内容を十分に読むべき旨、クーリング・オフに関する事項、消耗品を使った場合の扱い
文字の大きさ8ポイント以上8ポイント以上

契約書面を受け取った日が、8日間のクーリング・オフの起算日になります(特定商取引法48条1項)。2つの書面を1枚にまとめて契約前に渡しただけでは、契約書面を交付したことにはなりません。契約が成立した後に、契約書面を改めて交付します。

概要書面に書くこと

概要書面の記載事項(施行規則92条1項1号)
記載事項エステでの書き方の例
事業者の氏名・名称、住所、電話番号、法人なら代表者の氏名屋号だけでなく、契約の主体となる個人名または法人名
提供される役務の内容施術の種類(フェイシャル、ボディ、痩身など)、1回の時間、使用する機器
購入する必要のある商品がある場合は、商品名・種類・数量コースで使うホームケア化粧品、美顔器など
支払う金銭の概算額コース料金、入会金、関連商品の代金の概算
支払の時期と方法一括・分割、現金・カード・ローン
役務の提供期間契約期間(有効期限)
クーリング・オフに関する事項法48条の内容(関連商品を含む)
中途解約に関する事項法49条の内容(関連商品を含む)
ローン・カードの分割払いの場合の抗弁の接続割賦販売法に基づき、事業者に生じた事由をクレジット会社に対抗できること
前受金の保全措置の有無と内容5万円を超える前払いを受ける場合。講じていないときは「講じていない」と記載
特約があるときは、その内容施術者の指名、予約の変更ルールなど

あわせて、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し(施行規則92条2項)、8ポイント以上の大きさの文字と数字を用います(同条3項)。

契約書面に書くこと

契約書面には、特定商取引法42条2項の各号と施行規則93条・94条が求める事項を記載します。概要書面と重なる項目に加え、次の項目が加わる点に注意します。

契約書面で特に注意する記載事項
記載事項根拠書き方のポイント
役務の種類、提供の形態・方法、時間数・回数の総計施行規則93条1項1号〜3号「全12回・1回60分」のように総計を数字で
施術者の資格・能力について特約があるときはその内容同項4号「認定資格を持つ施術者が担当」とうたうなら、その旨を契約書面にも
契約の締結を担当した者の氏名同条2項2号実際に説明・契約したスタッフの氏名
契約の締結の年月日同項3号クーリング・オフの起算と照合できるように
関連商品を販売する者の氏名・名称、住所、電話番号(法人は代表者の氏名も)同項7号サロンと別の会社が商品を販売する場合は、その会社の情報
支払う金銭の額施行規則94条1項(表の一)入会金・施術料・関連商品の価格など、費目ごとの明細とその合計
中途解約の精算方法同項(表の三ロ)提供済みの施術の対価をどう計算するか(1回あたりの単価など)

契約書面では、クーリング・オフに関する事項と、関連商品の消耗品を使用した場合にクーリング・オフができなくなる旨(その扱いをする場合)を、赤枠の中に赤字で記載します(施行規則94条3項)。さらに、書面の内容を十分に読むべき旨も赤枠の中に赤字で記載し(同条4項)、8ポイント以上の文字を用います(同条5項)。

事務所の作成例:エステの契約書面(サービス購入契約書)

書面の骨格

修正前ご相談の時点の草案は、クーリング・オフ等の注意書きだけで、契約内容を記入する欄がなかった

修正後契約者欄、施術内容明細(施術名・回数・単価・1回の施術時間・総時間数)、関連商品明細(種類・数量・単価・小計)、入会金、合計金額、支払方法・回数・時期・金額の欄を設けた

注意書きだけでは「契約内容を明らかにする書面」にならない。回数×単価×時間を契約時に記入させると、中途解約のときの精算の根拠が書面に残る

事業者の表示

修正前運営会社とサロンの区別が曖昧

修正後運営会社と、サロンの店舗名・所在地・電話番号、契約を担当した者を別々の欄に記載

契約の主体と、施術を受ける場所・問い合わせ先が一目で分かるようにした

クーリング・オフの書き方

修正前別紙に「クーリング・オフに関する事項」「中途解約に関する事項」を並べる型

修正後契約書本文の一つの条として条番号を振り、その条全体を赤枠で囲む型を推奨形に

別紙が外れたり、一部だけが印刷されたりする事故を防ぐ。赤枠は1ページに収まる分量に絞ると、PDF化や印刷で枠が割れにくい

クーリング・オフの記載で外せない事項

施行規則94条1項の表の二は、契約書面に書くべきクーリング・オフの内容を細かく列挙しています。要点は次のとおりです。

  • 契約書面を受け取った日から数えて8日を経過するまでは、書面または電磁的記録で契約を解除できること
  • 事業者が解除について事実と違うことを告げたり、威迫したりして解除を妨げた場合は、改めて交付された書面を受け取った日から8日間は解除できること
  • 解除は、通知を発した時に効力を生じること
  • 事業者は、解除に伴う損害賠償や違約金を請求できないこと
  • すでに施術を受けていても、その対価を請求できないこと
  • 受け取った金銭は、速やかに全額を返すこと
  • 関連商品の販売契約も解除できること、その申出先がサロンと異なる場合はその旨と申出先
  • 関連商品の引取りの費用は販売した者が負担し、受け取った代金は全額返すこと

相談の現場から:クーリング・オフ欄で、レビューのたびに指摘すること

  • 契約書面に「詳細は交付済みの概要書面に準じる」とだけ書く例がありました。契約書面そのものに、損害賠償等を請求しないこと、提供済みの施術の対価も請求しないこと、全額を返還すること、関連商品の扱い、カード決済の取消しと返金の方法まで書くよう指摘しました。
  • 「すでに受けた施術の対価も請求しない」という事項は、「全額返金します」という約束とは別の記載事項です。全額返金の一文で足りると考えて落としやすいところです。
  • クーリング・オフの通知先が書かれていない書面も目立ちます。郵送ならどの宛先へ、メールならどのアドレスへ送ればよいかを具体的に書きます。事務所が作成した美容サブスクの法定書面では、書面とメールに加えてLINEでの通知も受け付ける旨と、通知文の例(契約日、契約内容、契約金額、書面の交付日、住所氏名)まで載せました。
  • 概要書面を契約前に渡したことを後から証明できるよう、「概要書面の交付日」を契約日とは別に記録する欄を設ける工夫もあります。

電子交付(電磁的方法による提供)の手順

令和5年6月から、お客様の承諾を得れば、概要書面・契約書面を紙ではなく電磁的方法で提供できるようになりました(特定商取引法42条4項)。ただし、承諾の取り方は厳格に決められています。

電子交付の承諾の手順(施行令26条、施行規則97条〜100条)
手順内容
提供方法を示す電子メール、ウェブページでのダウンロードなど、使う方法の種類と内容をあらかじめ示す
説明する承諾しなければ紙の書面が交付されること、提供される事項が重要であること、ファイルに記録された日から8日を経過するとクーリング・オフができなくなることなどを、平易な表現で説明する(施行規則99条1項・2項)
確認するお客様が閲覧の操作を自分で行えること、閲覧に必要な機器(画面がおおむね5インチ以上のもの)とメールアドレスを日常的に使っていること、セキュリティを確保していること、家族など指定する人への同時送信を希望するかを確認する(同条3項)
確認の方法お客様が日常使う機器を自分で操作し、事業者のウェブページ等を利用する方法で行う(同条4項)
承諾を得るお客様が氏名と、説明を理解した旨を記入する方法で得る。チェック欄だけなど、認識が明らかにならない方法は不可(同条5項)
承諾を証する書面電磁的方法で提供するまでに、承諾を得たことを証する書面を交付する(同条7項)。これを電磁的方法で提供できるのは同条8項の場合に限られ、店舗で施術するエステの契約書面を電子化する場合は、この書面を紙で交付する

提供したファイルは、お客様が出力して書面を作れること、改変されていないかを確認できる措置が講じられていることなどの基準を満たす必要があります(施行規則97条2項)。店頭でタブレットに署名してもらい、そのままPDFをメールで送る、という運用を始める前に、この手順を満たしているかを確認します。

書面に不備があるとどうなるか

契約書面の記載事項が欠けていたり、事実と違う記載があったりする場合は、法定の書面を交付したことにならず、クーリング・オフの8日間が進行しないと解されています。契約から何か月も経ってからクーリング・オフを主張され、それまでに受け取った全額の返金を求められる、という事態が起こりうるのはこのためです。書面の点検は、一度作って終わりではなく、メニューや料金を変えるたびに行います。

契約書面の構成例

事務所がエステのコース契約書面を作成するときの構成は、おおむね次のとおりです。記載事項を漏らさないだけでなく、お客様が読み進めやすい順番に並べることも、説明義務を果たしたことの裏付けになります。

エステの契約書面の構成例
順番見出し主な内容
1表題と書面の性質「特定継続的役務提供契約書面」であること、書面の内容を十分に読むべき旨(赤枠・赤字)
2当事者事業者の名称・住所・電話番号・代表者、サロンの店舗名・所在地、契約者の氏名・住所・連絡先
3契約の基本事項契約締結日、契約を担当した者の氏名、役務の提供期間(始期と終期)
4施術内容明細施術名、回数、1回の施術時間、総時間数、単価、小計
5関連商品明細商品名、種類、数量、単価、小計、販売者(サロンと異なる場合)
6支払金額と支払方法入会金・施術料・関連商品の費目ごとの明細と合計、支払方法・回数・時期・金額、クレジットの抗弁の接続
7前受金保全措置の有無と内容(講じていない場合はその旨)
8クーリング・オフ(赤枠・赤字)8日間の解除、妨害時の再起算、発信主義、損害賠償等の請求不可、提供済みの対価も請求不可、全額返還、関連商品、通知先と通知の例
9中途解約将来に向かっての解除、請求できる額の上限、提供済みの対価の精算方法(単価表を別紙に)、関連商品の精算
10特約施術者の指名、予約・キャンセルのルール、施術を断る基準など
別紙単価表、施術同意書との関係精算の根拠となる単価、同意書が契約の一部を構成すること

ひな形の流用で起きる典型的な不備

事務所に持ち込まれる書面の点検で、繰り返し見つかる不備があります。いずれも、他の業種や他の取引類型の書式を流用したことが原因です。

ひな形流用で起きやすい不備
不備起きる原因正しい書き方
中途解約の上限額が違う語学教室(開始前1万5千円、開始後5万円または残額20%の低い方)や美容医療の書式を流用エステは開始前2万円、開始後は提供済みの対価+2万円または残額10%の低い方
「いずれか低い額」が抜けている上限を「2万円または契約残額の10%」とだけ記載「いずれか低い額」と、提供済みの対価を加えることまで書く
クーリング・オフの期間が違う業務提供誘引販売(20日)や連鎖販売の書式を流用エステは8日
提供済みの対価も請求しない旨がない「全額返金します」の一文で足りると考えた既に施術を行っていても対価を請求しない旨を独立して記載
関連商品の記載がない施術だけの契約書式を流用関連商品も解除できること、消耗品の扱い、販売者の情報
前受金の保全の記載がない記載事項として知られていない保全措置の有無を記載。講じていなければ「講じていない」
担当者名・締結日の欄がない一般の申込書を流用契約の締結を担当した者の氏名と締結年月日の欄を設ける

脱毛サロンの特定商取引法に基づく表記でも、中途解約の違約金を「2万円又は契約残額の10%」とだけ記載し、「いずれか低い額」と「提供済みの役務の対価」の記載が抜けている例を見かけます。表記と契約書面とで、同じ内容を同じ正確さで書きそろえます。

よくあるご質問

エステの概要書面と契約書面は、1枚にまとめてもよいですか?

概要書面は契約前、契約書面は契約後に交付するものなので、契約前に1枚を渡しただけでは契約書面を交付したことになりません。契約が成立した後に、契約書面を改めて交付します。

エステの契約書面で赤枠・赤字にしなければならないのはどこですか?

書面の内容を十分に読むべき旨、クーリング・オフに関する事項、関連商品の消耗品を使用した場合に解除できなくなる旨(その扱いをする場合)です(施行規則94条3項・4項)。文字は8ポイント以上が必要です。

エステの契約書面は電子メールで送ってもよいですか?

お客様の承諾を得れば電磁的方法で提供できますが、提供方法の提示、説明、確認、お客様自身による承諾の記入、承諾を証する書面の交付など、施行規則99条の手順を満たす必要があります。

契約書面に担当者の名前を書く必要はありますか?

必要です。契約の締結を担当した者の氏名と、契約の締結年月日は、契約書面の記載事項です(施行規則93条2項)。

契約書面に不備があると、どうなりますか?

記載事項を欠く書面では法定の書面を交付したことにならず、クーリング・オフの期間が進行しないと解されています。後から全額返金を求められるおそれがあります。

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