このページの要点
- 体験1回で完結させるなら都度払い。当日にコースを契約する設計にすると、期間1か月超・総額5万円超のコースには、概要書面・契約書面とクーリング・オフがかかる(特定商取引法42条・48条)。
- 個別のメッセージや電話で、勧誘目的を告げずに来店を要請した場合などは、店内の契約も訪問販売に含まれうる(同法2条1項2号、施行令1条)。
- 「ボロボロになる」「モニター価格だから返金できない」「店舗契約だからクーリング・オフできない」などは不実告知。取消しの対象で、44条違反は罰則もある(同法44条・49条の2・70条)。
- キャンペーン価格で契約したコースは、契約時の単価で提供済みの対価を計算する。体験料の充当の仕方も、契約書面の明細に書いておく。
体験・初回限定を「完結型」にするか「入口型」にするか
体験コースや初回限定価格には、お客様にとっては気軽に試せる、サロンにとっては新規のお客様に来てもらうきっかけになる、という役割があります。一方で、体験の後にその場でコースを案内すると決めているサロンでは、体験の時間は法律の上では「勧誘の場」になります。体験の価格を決めるより先に、体験をどの型で運用するかを決めておきます。
| 型 | 運用 | 特定商取引法上の見方 | 整えるもの |
|---|---|---|---|
| 完結型 | 1回の体験施術だけで終わる。コースの案内は、お客様から尋ねられたときに限る | 体験そのものは期間も金額も要件に届かず、都度払いの取引として扱われるのが通常 | 予約・キャンセルの規約、施術同意書、体験価格の表示 |
| 当日契約型 | 体験の後にその場でコースを案内し、希望者はその場で契約する | そのコースが期間1か月超・総額5万円超なら特定継続的役務提供。概要書面は契約を結ぶまでに、契約書面は契約後遅滞なく交付する(同法42条1項・2項) | 概要書面・契約書面、勧誘のルール、体験の申込み時の案内表示 |
| 持ち帰り型 | 体験当日は案内にとどめ、契約は後日にする | 後日結ぶコース契約が対象。当日は概要書面を渡し、比較して考える時間を確保する | 概要書面、見積書、後日の連絡方法 |
| クーポン型 | 無料・低額の体験を、個別のメッセージ、チラシ、電話などで案内して来店してもらう | 案内の仕方によっては、店内で結んだ契約も訪問販売として扱われる場合がある(次の節で説明) | 案内文面の点検、来店前に示す説明 |
体験の価格を本コースの代金から差し引く(充当する)設計や、体験で受けた1回をコースの1回目に数える設計では、コースの対価の総額と、提供済みの回数の数え方が変わります。エステの金額要件の5万円は、施術料だけでなく、入会金やカウンセリング料、関連商品の代金も含めた総額で見ます。体験料をどう扱うかは、契約書面の施術内容明細に書いておくと、精算のときに迷いません。期間と金額の数え方は特定継続的役務提供のページで整理しています。
体験の当日にコースを契約するときの手順
当日契約型では、お客様は施術を受けた直後で、財布や予定を落ち着いて確認しにくい状態にあります。この状態で、法律が求める書面と説明を、順番どおりに踏むことが重要です。
- 契約を結ぶまでに、契約の概要を記載した書面(概要書面)を渡す(特定商取引法42条1項)。体験の前、または勧誘を始める時点で渡し、読む時間を取る
- 契約を結んだら、遅滞なく、契約の内容を明らかにした書面(契約書面)を渡す(同条2項)。この書面を受け取った日から8日を経過するまで、お客様は書面または電磁的記録の通知で契約を解除できる(同法48条1項)
- 解除の効力は、通知を発した時に生じる(同条3項)。サロンは、損害賠償も違約金も請求できず(同条4項)、すでに施術を提供していても、その対価を請求できない(同条6項)
- 受け取っていた金銭は、速やかに返還する(同条7項)。この定めに反する特約でお客様に不利なものは無効(同条8項)
契約書面を渡した日が、8日の数え始めの日です。書面に不備があると数え始めが成立しないため、いつまでも解除される状態が続きます。書面の作り方は概要書面・契約書面のページ、解除の通知を受けた後の手順はクーリング・オフと中途解約のページに譲ります。
体験当日の契約で、整えておく点の判断フロー
結ぶ契約は、期間が1か月を超え、入会金や関連商品を含めた総額が5万円を超えるか
はい特定継続的役務提供に当たる。概要書面を契約前に、契約書面を契約後遅滞なく交付する
いいえ特定継続的役務提供には当たらない。ただし、不実告知や威迫の禁止に近い内容は、消費者契約法や景品表示法の問題として残る
体験へ案内するとき、契約の勧誘をする場合があることを告げていたか
はい勧誘目的を告げない来店要請の心配は小さい。「他の人より著しく有利」と告げた案内かどうかは別に点検する
いいえ勧誘目的を告げない来店要請(特定商取引法施行令1条1号)として、店内の契約も訪問販売として扱われるおそれがある
概要書面を、勧誘や契約より前に渡し、読む時間を取ったか
はい渡した時刻と相手を記録する
いいえ契約までに渡していないと、概要書面の交付義務を果たしていない
契約書面を渡した日を記録し、解除できる期間と通知先を、書面を見てもらいながら伝えたか
はい受領の日と説明の内容を記録に残す
いいえ8日の数え始めが不明確になり、後の争いの火種になる
計算例:体験当日に8回コースを契約し、書面を受け取って6日目に解除した場合
| 契約の内容 | 8回コース、総額96,000円。体験回を含めて2回の施術を受けた |
|---|---|
| 受け取っていた金額 | 96,000円 |
| 提供済みの2回分の対価 | 請求できない(特定商取引法48条6項) |
| 損害賠償・違約金 | 請求できない(同条4項) |
返還額:96,000円(施術を受けた分も差し引かない)
関連商品を同時に購入していた場合は、関連商品の契約も同じ通知で解除できます(同条2項)。商品の引取りの費用は事業者の負担です。
「体験のご案内」の出し方で、店内の契約も訪問販売になることがある
訪問販売というと、お客様の自宅に出向く営業を思い浮かべがちですが、条文はもっと広く定めています。営業所や代理店などの「営業所等」で結んだ契約でも、営業所等以外の場所で呼び止めて同行させた人や、政令で定める方法で誘い出した人(特定顧客)と結んだ契約は、訪問販売に含まれます(同法2条1項2号)。政令で定める方法は、次の二つです(特定商取引法施行令1条)。
- 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ、電磁的方法(メールやメッセージなど)、ビラやパンフレットの配布、拡声器での呼びかけ、住居の訪問によって、契約の勧誘をするためのものであることを告げずに、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(1号)
- 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ、電磁的方法、住居の訪問によって、他の人に比べて著しく有利な条件で契約できると告げて、来訪を要請すること。ただし、その日より前にその事業で取引のあった人への要請は除く(2号)
| 案内の出し方 | 条文との関係 | 対応 |
|---|---|---|
| 個別のメッセージやメールで「無料体験にご招待します」とだけ伝え、来店後にコースの契約を勧める | 勧誘目的を告げずに来訪を要請する方法(施行令1条1号)に当たりうる | 案内文に「体験後にコースのご案内をする場合があります」と明記する |
| 電話で「あなただけの特別価格でご案内できます」と告げて来店を促す | 著しく有利な条件を告げた来訪要請(同条2号)に当たりうる。過去に取引のあった人は除外 | 有利な条件の中身と期限を、事実のとおりに書面で示す |
| 街頭で呼び止めて、その場からサロンへ同行させる | 営業所等以外の場所で呼び止めて同行させた人(法2条1項2号) | 勧誘目的を最初に告げる。呼び止めた同行の運用そのものを見直す |
| ホームページや雑誌の広告で、不特定多数に体験を募集する | 施行令1条が挙げる方法に、広告の掲載は含まれていない | 広告の表示そのものは、景品表示法と特定継続的役務提供の広告規制(同法43条)の対象 |
訪問販売に当たると、書面の交付(法4条・5条)、勧誘に先立つ氏名や目的などの明示(法3条)、不実告知と威迫の禁止(法6条)、8日間のクーリング・オフ(法9条)が加わります。さらに、勧誘目的を告げずに誘い出した人に対しては、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘してはならないという禁止があります(法6条4項、施行令5条)。個室の施術室は、公衆の出入りする場所ではありません。特定継続的役務提供の規制と訪問販売の規制が重なるときの書面の整え方は、取引の実態に応じて個別に確認する必要があります。そのうえで、案内の段階で勧誘目的を告げておけば、そもそも重なる事態を避けやすくなります。
実務での注意点:体験の申込みフォームで、先に入れておく一文
- 「体験の後に、コースや商品のご案内をすることがあります。ご案内を希望されない場合は、その旨をお伝えください」という趣旨の一文を、申込みフォームとご案内の文面の両方に入れておく運用が考えられます。
- 案内を希望しない方にコースの話をしない、と決めておくと、現場での勧誘の線引きがはっきりします。申込みの時点で目的を示すことが、案内の出し方の点検にもなります。
勧誘で問題になる言い回しと、契約が取り消されるリスク
勧誘の場面では、事実と異なることを告げる行為(不実告知)、重要な事項を故意に告げない行為、人を威迫して困惑させる行為が禁止されています(特定商取引法44条1項〜3項)。同じ勧誘は、消費者契約法の取消しの対象にもなります。次の言い回しは、サロンの現場で出やすいものです。
体験の場で出やすい言い回しの点検
言い回しこのままではお肌がボロボロになってしまいますよ
問題になる点契約を必要とする事情について事実と異なることを告げると、不実告知になる(法44条1項7号)。若い方の容姿や体型への不安につけ込む場合は、消費者契約法4条3項5号ロの取消しの問題にもなる
書き換え肌診断の結果と測定値をそのまま伝え、診断の結果とコースの提案とは分けて示す。続けるかどうかは本人が決めると伝える
言い回しいつでもご希望の時間に、必ず予約が取れます
問題になる点予約の取りやすさは契約の内容にかかわる。実際と異なれば不実告知(法44条1項)
書き換え直近の空き状況と混みやすい曜日をそのまま伝える。予約が取れなかった期間は有効期限を延ばす定めがあれば、それを説明する
言い回しモニター価格なので、解約してもほとんど返金できません
問題になる点解除に関する事項についての不実告知(法44条1項6号)。解除を妨げるための告知も禁止されている
書き換え「受けた分を契約時の単価で計算し、法律で決まった上限の範囲で精算します」と、実際の精算方法を説明する
言い回し店舗での契約なので、クーリング・オフはできません
問題になる点店頭で結んだ契約でも、特定継続的役務提供に当たれば解除できる。解除に関する事項についての不実告知(法44条1項6号)
書き換え契約書面を受け取った日から8日以内は解除できることを、書面を示しながら伝える
言い回し今日決めないと、この価格は二度と出せません
問題になる点価格や条件が実際と違えば、対価に関する事項の不実告知(法44条1項3号)。期限が実在しなければ、有利さを誤認させる表示にもなる
書き換え適用期限と条件を、実際のとおりに書面で示す。検討したい方には、概要書面を持ち帰ってもらう
言い回しご家族に相談したいなら、今日はお帰しできません
問題になる点勧誘の場所から退去する意思を示した人を退去させない行為や、相談のための連絡を威迫して妨げる行為は、消費者契約法4条3項2号・4号の取消しの対象。特定商取引法44条3項の威迫・困惑にもなりうる
書き換え相談したいという申出があったら、勧誘をそこで終える。概要書面と連絡先を渡して、後日の判断に任せる
| 結果 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 契約の取消し | 特定商取引法49条の2第1項、消費者契約法4条 | 不実告知によって事実だと誤認した場合や、故意に告げられなかった事実が存在しないと誤認した場合に、お客様が契約を取り消せる。特定商取引法の取消権は、追認できるときから1年、契約の締結から5年で消滅する(同法49条の2第2項、9条の3第4項) |
| 行政処分 | 特定商取引法46条・47条 | 是正の指示、2年以内の業務停止命令。いずれも公表される |
| 罰則 | 特定商取引法70条1項1号、74条1項2号 | 44条の違反は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)。従業者が行った場合、行為者のほか、法人には1億円以下の罰金 |
| 根拠資料の提出 | 特定商取引法44条の2 | 効果についての説明の裏付けとなる資料の提出を求められ、出せないと、不実告知をしたものとみなされる |
広告での表現(「痩せる」「小顔」などの効果の書き方、ビフォーアフター、口コミの依頼)はエステの広告表示のページで扱います。このページでは、お客様と向き合った勧誘の場面に絞ります。
体験中の勧誘の方法:服を脱いだ状態、人数、場所、時間
勧誘の言葉と並んで、勧誘の方法も問題になります。エステの体験は、お客様が施術着に着替え、個室で横になった状態で行われます。この状態で複数の人に囲まれて勧められれば、断りにくいのは当然です。威迫して困惑させる行為は、特定継続的役務提供でも禁止されています(同法44条3項)。威迫や困惑のために8日以内に解除できなかった場合は、サロンが改めて解除できる旨を記載した書面を渡し、その書面を受け取った日から8日を経過するまで、お客様は解除できます(同法48条1項)。
| 場面 | 避けたい運用 | 整える運用 |
|---|---|---|
| 勧誘の時刻 | 施術着のまま、施術台の上で、施術の終わり際に切り出す | 着替えて通常の服装に戻った後、カウンセリングスペースで説明する |
| 人数 | 複数のスタッフが同時に取り囲んで勧める | 説明者は原則1人。同席が必要なときも、お客様の同意を得る |
| 時間 | 断った後も、時間をかけて説明を重ねる | 説明の時間をあらかじめ決める。検討すると言われたら、そこで終える |
| 場所 | 出口をふさぐ配置、施錠した個室 | 出入りが自由な配置にする。退去したいという申出に必ず応じる |
| 相談 | 家族や知人への連絡を認めない | 相談したいという申出に応じる。概要書面を渡し、後日の連絡先を伝える |
| 決済 | その場で高額のカード契約や分割払いを組ませる | その場で決めない選択肢を示す。クレジットを使う場合は、抗弁の接続を含む書面を渡す |
断られた後に勧誘を続けないことは、訪問販売に当たる場合には、法律上の禁止になっています(法3条の2第2項)。訪問販売に当たらない取引でも、お客様が帰りたいと伝えたのに帰さなければ、消費者契約法上の取消しの対象です(同法4条3項2号)。
若い方への勧誘には、もう一段の配慮が要ります。成年年齢は18歳で(民法4条)、未成年者が法定代理人の同意なく結んだ契約は取り消せます(同法5条1項・2項)。18歳以上でも、社会生活上の経験が乏しく、容姿や体型への不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおって契約が必要だと告げれば、取消しの対象になります(消費者契約法4条3項5号ロ)。年齢だけで決まるわけではありませんが、体験の申込みで年齢を確認し、高額なコースの契約では、その場で決めずに持ち帰ってもらう運用が安全です。
キャンペーン価格・体験料で契約したコースの中途解約
体験の価格やキャンペーン価格は、契約の入口で決めたことが、解約のときの精算に跳ね返る部分です。中途解約のとき、サロンが請求できるのは、施術の開始後であれば「提供された施術の対価に相当する額」と「2万円または契約残額の10%のいずれか低い額」の合計までです(特定商取引法49条2項1号、施行令別表第四)。契約残額は、対価の総額から提供された施術の対価に相当する額を引いた額です。そのため、提供済みの施術の対価を高く見積もるほど、請求できる額が増え、返金額が減ります。
キャンペーン価格で契約したコースで、解約のときだけ「通常料金」で使用済みの回数を計算する書き方は、実質的に法定の上限を超える請求になるおそれが大きい書き方です。精算は、契約したときの単価で行うのが基本です。次の計算例で、違いを確認します。
計算例:1回の通常料金が10,000円のコースを、キャンペーン価格の10回60,000円で契約し、3回受けた後に解約した場合
| 契約の内容 | 10回コース、総額60,000円(1回あたり6,000円) |
|---|---|
| 提供済みの3回分の対価 | 6,000円 × 3回 = 18,000円(契約時の単価) |
| 契約残額 | 60,000円 − 18,000円 = 42,000円 |
| 解約によって通常生ずる損害の上限 | 2万円と、契約残額42,000円の10%(4,200円)のいずれか低い額 = 4,200円 |
| 返金額 | 60,000円 − 18,000円 − 4,200円 = 37,800円 |
返金額:37,800円(上限いっぱいを請求した場合)
通常料金の10,000円で3回分(30,000円)を計算すると、返金額は27,000円まで下がります。10,800円の差は、契約時の単価を基準にする考え方からは認められにくい請求です。入会金や関連商品がある場合は、別に精算します。
| 扱い方 | 契約書面での書き方 | 精算での影響 |
|---|---|---|
| 体験料は別の取引とする | 体験料はコースの代金に含めない。体験は1回で完結する | コースの精算に体験を含めない。コース代金と回数の計算が単純になる |
| 体験料をコース代金に充当する | コースの総額から体験料を差し引いた額を代金とし、その旨を明細に書く | 対価の総額が差し引き後の額になる。施術内容明細に、体験の回の扱いを書いておく |
| 体験の回をコースの1回目に数える | 回数の総計に体験の回を含め、その回の単価を明記する | 提供済みの回数に体験が入る。体験の回の単価が、他の回と異なる場合は、契約時の単価として別に書く |
キャンペーン価格の表示にも気をつけます。実際には販売していない「通常価格」を並べたり、期間を区切らずに「今だけ」とうたったりする表示は、景品表示法が禁じる不当な表示に当たりえます(同法5条1号・2号)。広告の側の整理はエステの広告表示のページに置き、ここでは契約書面側の記載に絞ります。
書き方の例(一般的な例):料金の欄を、契約ごとの記入欄にする
申込契約書の料金欄の書き方
見直し前の書き方通常の料金、キャンペーン料金、回数券などの料金表を、契約書の中に固定で記載する
見直し後の書き方コース名・総額・有効期限を、契約ごとに記入する欄にする
料金表を固定で印刷すると、キャンペーンが変わるたびに契約書と実際の価格がずれる。契約ごとに記入すれば、契約時の価格と単価が書面に残り、中途解約のときの精算の根拠になる
スタッフ向けの勧誘ルールと、記録、物販の歩合
勧誘の違反で行政処分を受けるのは、サロン(役務提供事業者)です。スタッフが個人の判断で言った一言も、サロンの責任になります。体験を入口にするサロンでは、勧誘のルールを文書にして、スタッフに渡しておくことが前提になります。
- 勧誘してよい場面と、してはいけない場面を決める(施術中や、施術着のままの状態では勧誘しない)
- 使ってはいけない言い回しの一覧を作る(前の節の表を出発点にして、サロンのメニューに合わせて増やす)
- 説明の順番を決める(概要書面を渡す→コースの内容と総額→期間→解約と返金→考える時間→申込み)
- 検討したいという申出、断りの意思、相談したいという申出があったときの対応を決め、そこで勧誘を終える
- 体験の案内の際に、勧誘目的を告げているか(体験申込みフォームの一文)を、定期的に確認する
勧誘の記録は、後で争いになったときの、サロンを守る資料になります。次の項目を残します。
| 記録 | 残す内容 |
|---|---|
| 来店の経緯 | 体験の申込みの方法、案内文面、申込み時に示した説明 |
| 概要書面の交付 | 渡した日時、渡した人、書面の版 |
| 勧誘の内容 | 説明した担当者、説明した時間帯、説明したコースと総額、お客様の反応 |
| 契約書面の交付 | 渡した日、解除できる期間と通知先を説明したこと、お客様の受領の確認 |
| 断りや相談の申出 | 申出の内容と、そこで勧誘を終えたこと |
スタッフの報酬の組み立ても、勧誘の方法に影響します。スタッフとの業務委託契約では、施術と物販で歩合の料率を分け、「施術売上」を返金や値引き、キャンセルを引いた後の金額と定めるなど、基準となる金額の範囲を明確にするのが一般的です。コース契約の金額に連動して歩合を払うと、契約を急がせる動機が生まれます。コースの契約額を基準にするのか、提供した施術の回数を基準にするのか、解約があったときに調整するのかは、勧誘の質に影響する設計です。歩合の組み立ての全体はエステティシャンとの業務委託契約書のページで解説しています。
消費者の側の相談でも、エステに関する典型として、無料や少額の体験の後に高額な回数券を勧められたというものがよく挙げられます。受け手の側の相談がこの形で多いことは、事業者の側がこの場面を点検する理由になります。
特定商取引法に基づく表記で、販売方法を「店舗販売のみ」としたうえで、中途解約の違約金の上限を表示する場合は、「2万円または契約残額の10%」とだけ書かず、「いずれか低い額」と「提供済みの役務の対価」まで書いて、契約書面と同じ正確さにそろえます。表記や規約全体の組み立ては利用規約・プライバシーポリシー・特商法表記のページにまとめています。
体験・初回限定の運用で起きがちなこと
体験を入口にするサロンで、繰り返し起きる形を整理します。いずれも、書面と社内のルールを先に整えておけば防げるものです。
| 起きがちなこと | なぜ起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 体験の日に契約したお客様が、帰宅後に「勧誘がつらかった」と解除を申し出る | 施術着のまま、複数の人に囲まれて勧めた。契約書面を渡した日の記録もない | 着替え後に説明する。説明者は原則1人。契約書面を渡した日と説明を記録する |
| 解約の際に「モニター価格だから返金できない」と説明してしまう | 契約時の単価で精算するという基本が、現場で共有されていない | 精算方法を一枚にまとめて渡す。禁止する言い回しの一覧に入れる |
| 無料体験の案内を送ったところ、訪問販売として扱うべき契約だったと指摘される | 案内に勧誘目的が書かれていない。有利な条件を強調した | 案内文と申込みフォームに、体験後の案内の有無を明記する |
| 体験料の扱いが、契約書面とキャンペーンの案内で食い違う | 体験料を充当するのか、別取引なのかを決めずに案内した | 三つの扱い方から選び、施術内容明細に書く |
| 若い方に高額なコースを、その場で契約させたことが問題になる | 年齢や経験を確認せず、その場の契約を前提にした | 高額なコースは持ち帰りを標準にする。年齢確認を申込みに入れる |
| 物販やコースの歩合が高く、強引な勧誘が続く | 契約額に連動した報酬で、解約時の調整もない | 報酬の基準を見直す。勧誘ルールを遵守事項にする |
体験を入口にする設計は、サロンの集客に有効です。同時に、体験の価格、勧誘の方法、キャンペーン価格の精算、書面の交付が、一本の流れとしてつながっている必要があります。一つでも欠けると、その部分から解除や取消しが生じます。出張で体験や施術を行う場合は、契約を結ぶ場所が変わり、別の規制が重なります。出張エステ・出張リラクゼーションの契約のページで整理しています。
よくあるご質問
エステの体験コースは、特定継続的役務提供に当たりますか?
1回で完結する体験は、期間と金額の要件に届かず、通常は当たりません。ただし、体験の後に結ぶコースの契約が、期間1か月超・総額5万円超の要件を満たせば、そのコースは特定継続的役務提供です。体験料をコースの代金に充当する場合は、総額の数え方にも影響します。
体験当日にコースを契約させる場合、何を渡せばよいですか?
契約を結ぶまでに概要書面を、契約を結んだ後に遅滞なく契約書面を渡します(特定商取引法42条1項・2項)。契約書面を受け取った日から8日を経過するまで、お客様は理由を問わず解除でき、その日の記録と、解除できる期間・通知先の説明を残しておくことが重要です。
無料体験の案内を個別に送ると、訪問販売になりますか?
契約の勧誘が目的であることを告げずに、電話やメッセージ、チラシなどで来店を要請した場合などは、店内で結んだ契約も訪問販売として扱われうる定めがあります(特定商取引法2条1項2号、施行令1条)。案内文に、体験後にコースの案内をする場合があることを明記して、勧誘目的を示しておくのが安全です。
モニター価格で契約したコースを解約されたら、どの単価で精算しますか?
契約したときの単価で、提供済みの回数分を計算します。解約のときだけ通常料金で計算する定めは、法定の上限を超える請求になるおそれがあります。そのうえで、開始後は提供済みの対価に加えて、2万円と契約残額の10%のいずれか低い額までを請求できます(特定商取引法49条2項1号、施行令別表第四)。
勧誘で「クーリング・オフはできません」と言うとどうなりますか?
店頭で結んだ契約でも、特定継続的役務提供に当たれば解除できます。できないと告げることは、解除に関する事項についての不実告知になります(同法44条1項6号)。その結果、お客様は契約を取り消すことができ、行政処分や、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象にもなります(同法49条の2、46条・47条、70条1項1号)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別のサロンに必要な対応は、メニュー、使用する機器、料金の受け取り方、勧誘の方法によって異なります。事務所の作成例・相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたエステサロン・美容施術サービスの契約書、法定書面、規約、同意書、業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 厚生労働省 / 国民生活センター