エステのサブスク・回数券・法人契約の作り方

集客と売上を安定させる月額制と回数券。「未使用分は返さない」という書き方が、中途解約のルールとぶつからないように設計します。

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月内の未使用分を失効させる条項を、解約時の精算にまで当てはめると、法律の上限を超える請求になりかねません。

このページの要点

  • 最低契約期間の総額が5万円を超える月額制は、特定継続的役務提供に当たる可能性が高い。契約書と法定書面の期間・回数・金額を一致させる。
  • 月々の運用ルール(未使用分の繰越しなし)と、解約時の精算ルール(未提供分の返還)は、別の条項として書き分ける。
  • 回数券の有効期限は、特定商取引法(定めなしは特段の事情がない限り1か月超)と資金決済法(6か月超の前払い)の両方から決める。
  • 法人契約でも、健康状態の申告、施術同意、要配慮個人情報の同意、写真の掲載同意は、施術を受ける従業員本人から取る。
月額制(サブスク)や回数券は、エステの集客と売上の安定に欠かせない売り方です。その一方で、「未使用分は返金しない」「途中でやめても残りの月額を払う」といった書き方は、特定継続的役務提供の中途解約のルールや消費者契約法とぶつかりやすく、トラブルの多い分野でもあります。このページでは、事務所が作成した個人向け・法人向けの美容施術サブスク一式と、福利厚生型の施術契約をもとに、月額制と回数券の組み立て方を整理します。

月額制・回数券・コースの違い

エステの継続的な売り方の比較
売り方お金の受け取り方特定継続的役務提供との関係設計で最も注意する点
コース(12回など)契約時に一括、または分割1か月超・5万円超なら当たる中途解約の精算単価
回数券購入時に一括有効期限の定めがなければ、特段の事情がない限り常に1か月超として扱われる有効期限の長さと、期限切れの未消化分
月額制(自動更新・縛りなし)毎月前払い1本の継続した契約と見られる可能性がある解約の方法と、解約月の扱い
月額制(最低契約期間あり)毎月前払い最低期間の総額が5万円を超えれば当たる可能性が高い最低期間内の解約と、未提供分の返還
法人契約(福利厚生)法人が毎月支払う契約者が法人であることを前提に組む(適用除外の範囲は個別確認)利用者個人からの同意の取得、法人間の違約金

個人向けサブスクで決めておくこと

事務所が作成した個人向けの美容施術サブスク契約書では、コースごとの月額、1か月に利用できる回数の上限、「同じ施術は月1回まで」というルール、提供開始の時期(決済が完了した日)を、利用規約と法定書面の両方に同じ内容で記載しました。決めておく項目を整理すると、次のとおりです。

個人向けサブスクの規定項目
項目定める内容作成時の注意
契約期間最低契約期間と、以後の自動更新の単位法定書面の「役務の提供期間」と一致させる
月額と支払総額コース別の月額、最低期間の支払総額総額は「月額×最低期間の月数」で書面に明記
利用回数月の上限回数、同一施術の回数制限回数の総計は契約書面の記載事項
未使用回数翌月への繰越しの可否解約時の未提供分の返還とぶつからない書き方にする
予約とキャンセル当日・無断キャンセル、遅刻の扱い店の責め・天災の場合は消化しない
日割り月の途中の開始・解約開始月・解約月の扱いを書く
中途解約精算の方法法令と法定書面に従うことを明記し、法令を超える請求をしない
プラン変更上位・下位コースへの変更の時期変更後の契約が新たな書面の対象になるか確認

「未使用分は返さない」と中途解約の関係

サブスクでよく見られるのが、「月内の未使用回数は翌月に繰り越さず、返金・減額もしない」という条項です。月ごとの利用機会に対して料金が発生する、という考え方自体は成り立ちます。事務所が作成した契約書でも、対価は個々の施術ではなく役務の提供の機会の付与に対して発生する、と性質を書いたうえで、「法令により返還が義務付けられる場合を除き」と留保を付けました。

問題は、そのサブスクが特定継続的役務提供に当たる場合です。中途解約のときは、提供済みの役務の対価と法定の上限額を超えて請求できず(特定商取引法49条2項)、すでに受け取った月額のうち未提供の部分は返還の対象になります。「月内の未使用分を失効させる」条項を、解約時の精算にまで当てはめると、法律の上限を超える請求になりかねません。月々の運用ルールと、解約時の精算ルールは、別の条項として書き分けておきます。

計算例:最低6か月・月額15,000円・月2回のサブスクを、3か月目の途中で解約

最低期間の支払総額(前払いと仮定)15,000円 × 6か月 = 90,000円
1回あたりの単価(契約時)15,000円 ÷ 2回 = 7,500円
提供済みの施術5回 → 7,500円 × 5回 = 37,500円
契約残額90,000円 − 37,500円 = 52,500円
損害の上限2万円と、52,500円の10%(5,250円)のいずれか低い額 = 5,250円
請求できる上限37,500円 + 5,250円 = 42,750円

全額を前払いで受け取っていた場合の返金額:90,000円 − 42,750円 = 47,250円

毎月払いで、すでに受け取っている額が請求できる上限より少ない場合は、その差額の範囲で請求できるかを検討します。月額制の精算は、単価の決め方を契約時に書面で示しておくことが前提です。

事務所の作成例:個人向けサブスク契約書(依頼者との協議を踏まえた改訂)

契約期間

修正前1か月・自動更新

修正後半年を超える一定の月数を最低契約期間とし、以後1か月ごとの自動更新。法定書面にも同じ期間と支払総額を記載

最低期間の総額が5万円を大きく超えるため、特定継続的役務提供として書面体系を一本化した

中途解約

修正前解約手数料の計算を契約書の本文で詳細に規定

修正後「特定商取引法その他の法令と法定書面に従い、提供済みの役務の対価、未提供部分、解約手数料を基準に精算する」「法令の範囲を超えて違約金等を請求しない」と、計算を法定書面に委ねる構成

契約書と法定書面で計算方法が食い違う事故を防ぐ

キャンセル

修正前当日・無断キャンセルは一律1回消化

修正後当日・無断キャンセルは1回消化、遅刻は時間短縮または消化。ただし店の責め・天災等の場合は適用しない

一律の消化は、店側の事情によるキャンセルまで対象になってしまうため

回数券の有効期限をどう決めるか

回数券の有効期限は、特定商取引法と資金決済法の両方に関わります。有効期限の定めがない回数券は、特定商取引法上、特段の事情がない限り常に1か月を超えるものとして扱われます。一方、券面やシステム上に金額や回数が記録される前払いの回数券は資金決済法の前払式支払手段に当たることがあり、発行の日から6か月以内に限って使えるものは同法の規制の対象外です(資金決済法4条2号、同法施行令4条2項)。

回数券の有効期限と規制
有効期限特定商取引法(エステ)資金決済法
定めなし特段の事情がない限り期間要件を満たす(総額5万円超なら対象)前払式支払手段に当たる場合、未使用残高の基準額を超えると届出等の義務
1か月以内期間要件を満たさない対象外(6か月以内)
1か月超〜6か月以内総額5万円超なら対象対象外(6か月以内)
6か月超総額5万円超なら対象前払式支払手段に当たる場合、規制の対象になりうる

有効期限を短くしすぎると、期限内に消化できない回数券を売ったとして、消費者契約法上の争いの種になります。通える頻度から逆算して期限を決め、期限が近づいたら知らせる運用も、トラブルを減らす実務的な工夫です。

法人向けサブスク(従業員が利用する型)

法人が契約者となり、その従業員が施術を受ける型では、契約の当事者と、実際に施術を受ける人が分かれます。事務所が作成した法人向け美容施術サブスク契約書では、次のように組み立てました。

  • 契約は法人とサロンの間で結び、利用者個人との間に直接の契約関係を生じさせない
  • 利用者の選定・管理、健康状態の確認は法人の責任とし、利用者の行為は法人の行為とみなす
  • 利用枠は個人ごとではなく、法人単位で月の利用回数を定める
  • 高出力の施術など一部の施術は、同じ施術を月1回までとする
  • 名義貸しや利用権の譲渡を禁止し、来店時に本人確認を行う
  • 月額を毎月前払いとし、最低契約期間の後は1か月ごとの自動更新

法人間の契約では、消費者契約法の「平均的な損害」の規制は直接には適用されません。ただし、最低契約期間内の解約で「残りの期間の料金全額を違約金とする」と書くと、過大な違約金として公序良俗の観点から争われる余地があります。事業者どうしでも、違約金の金額には根拠を持たせておきます。

福利厚生型の施術契約の改訂

法人が従業員の福利厚生として施術サービスを契約する型の契約書では、初版の後に依頼者から伺った運用の実情を踏まえて、次のような点を改めました。

事務所の作成例:福利厚生型の施術契約(運用の確認を踏まえた改訂)

初年度の解約

修正前初年度は中途解約不可。自己都合の解約は月額の数か月分の違約金、超える損害も別に請求

修正後初年度中でも、満了日で終了する解約の申出はできる。満了まで料金の支払義務は続くが、その性質は最低契約期間の対価で、違約金・損害賠償ではない。店は満了まで利用できる状態を維持する

違約金は、事業者間でも著しく過大であれば公序良俗に反して無効とされる余地があり、紛争の火種になる。支払義務の性質を「対価」として整理した

遅刻

修正前一定時間以上の遅刻は施術を断れる

修正後原則として断れるが、予約状況に支障がなければ時間を短縮・変更して施術できる

一律の拒否は、空き枠があっても施術しない運用になり、顧客満足を下げる

連絡できない場合

修正前通信やLINEの障害で手続できなくても店は責任を負わない

修正後利用者の責めによらない障害で当日までに連絡できず、合理的な資料で証明したときは1回消化扱いにしない

一律の免責は、利用者個人との関係で争われる

写真の掲載

修正前定めなし

修正後施術写真、ビフォーアフター、施術風景、感想を店のSNS・ウェブ・広告に使うのは本人の事前の同意がある場合に限る。氏名・勤務先など個人が特定できる情報は別に明確な承諾を得る。掲載の停止・削除の申出には、店が管理する媒体について合理的な期間内に対応する

法人契約でも、写真に写るのは従業員個人。同意は本人から取る

損害賠償の上限を「残り回数分の料金」とする書き方も見かけますが、事故が起きた時期によって上限が極端に低くなり、無効とされるおそれがあります。事務所の作成例では、上限を「直近の一定期間の支払額」として、時期による偏りが出ないようにしました。

法人契約でも、利用者本人から取るもの

法人契約で、利用者個人から取得する同意・申告
書類・手続理由
健康状態の申告(カウンセリングシート)施術の可否を判断するのは、施術を受ける本人の状態
施術同意書説明を受けて同意したのは本人であることの記録
要配慮個人情報の取得の同意病歴などは、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければ取得できない(個人情報保護法20条2項)
写真・体験談の掲載同意肖像やプライバシーは本人に帰属する
本人確認名義貸し・利用権の譲渡を防ぐ

休会・プラン変更・解約の手続

月額制では、休会やプラン変更の扱いがあいまいだと、毎月のように問い合わせとトラブルが起きます。規約に次の項目を定めておきます。

月額制の手続で定めておく項目
手続定める内容注意点
休会休会できる期間の上限、休会中の料金(無料・減額)、休会中の最低契約期間の扱い休会期間を最低契約期間に含めるかを明記
プラン変更変更の申出の期限、変更が適用される月、上位・下位への変更の条件変更後の契約が、新たに法定書面の対象になるか確認
解約解約の申出の方法と期限、解約月の利用と料金電話だけに限定しない。オンラインで申し込めるなら、オンラインで解約できるようにする
自動更新更新の単位、更新前の通知の有無最低契約期間の満了前に、満了と更新の案内をすると親切
料金の改定改定の通知の時期、改定に同意しない場合の解約既存の契約者への適用の時期を明記

ウェブ上でサブスクの申込みを受ける場合は、通信販売の「特定申込み」として、申込みの最終確認画面に、役務の分量(回数・提供期間など)、対価、支払の時期と方法、提供の時期、申込みの期間の定め、解約・解除に関する事項を表示する必要があります(特定商取引法12条の6第1項)。申込みは簡単なのに、解約の方法が分かりにくい設計は、それ自体が苦情の原因になり、表示の義務違反を問われるおそれもあります。

よくあるご質問

エステのサブスクは特定継続的役務提供に当たりますか?

最低契約期間があり、その期間の総額が5万円を超える月額制は、当たる可能性が高いです。縛りのない自動更新の月額制も、1本の継続した契約と見られる可能性があるため、継続利用を前提とするなら法定書面を整えておくのが安全です。

サブスクで「未使用分は返金しない」と書いてもよいですか?

月々の運用ルールとしては定められますが、特定継続的役務提供に当たる場合の中途解約では、未提供分の返還が必要です。月々のルールと解約時の精算ルールは、別の条項として書き分けます。

エステの回数券の有効期限は何か月にすべきですか?

通える頻度から逆算して決めます。有効期限の定めがないと特定商取引法上は特段の事情がない限り常に1か月超として扱われ、6か月を超える前払いは資金決済法の対象になりうる点も考慮します。

法人向けのエステサブスクで、クーリング・オフは必要ですか?

契約者が法人であることを前提に組むのが一般的ですが、適用除外の範囲は個別の確認が必要です。健康状態の申告や施術同意、写真の掲載同意は、施術を受ける従業員本人から取得します。

最低契約期間内の解約で、残りの月額を全部請求してもよいですか?

個人のお客様との特定継続的役務提供に当たる契約では、法定の上限を超えて請求できません。法人との契約でも、過大な違約金は争われる余地があるため、支払義務の性質や金額の根拠を整理しておきます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別のサロンに必要な対応は、メニュー、使用する機器、料金の受け取り方、勧誘の方法によって異なります。事務所の作成例・相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたエステサロン・美容施術サービスの契約書、法定書面、規約、同意書、業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 厚生労働省 / 国民生活センター

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