エステ・リラクゼーションサロンの迷惑客対策(来店客規約・誓約書・口コミ)

禁止事項を並べるだけでは、現場の施術者は守れません。規約・誓約書・運用を分けて設計し、消費者契約法の限界も踏まえて書きます。

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「当店の判断で即時退店、返金なし」「低評価の投稿は違約金」といった広い条項は、消費者契約法で無効とされるおそれがあり、かえって店を弱くします。

このページの要点

  • 禁止事項は、規約に書くルールと、刑法などで判断される犯罪の線引きを分ける。盗撮は性的姿態撮影処罰法2条、不退去は刑法130条、威力業務妨害は同法234条の問題になりうる。
  • 迷惑行為への違約金は、消費者契約法9条1項1号の「平均的な損害」を超える部分が無効。一律の高額な違約金より、備品の破損や清掃費用などの実費を請求する書き方が説明しやすい。
  • 口コミの投稿を禁じる条項は、正当な感想や批判まで止められない。事実に反する中傷については、情報流通プラットフォーム対処法5条1項に基づく発信者情報の開示請求の手続がある。
  • 防犯カメラは利用目的を示し、警察への提供は個人情報保護法27条の例外に当たるかを個別に判断する。雇用する従業員には、2026年10月1日から労働施策総合推進法33条の措置義務がかかる。
迷惑客への備えは、禁止事項の一覧を作ることではなく、「何をしたら、誰が、どの順番で止めるか」を決めておくことです。来店客向けの規約と誓約書には、禁止事項、施術の中止と退店、利用停止、違約金、撮影・録音、口コミ、防犯カメラと個人情報の取扱いを書きます。ただし、書いたから効くとは限りません。消費者契約法で無効になる書き方があり、口コミのように契約では止められない領域もあります。本ページは、エステ・リラクゼーションサロンの来店客向けの規約と誓約書の設計と、迷惑行為が起きたときの運用を整理します。

迷惑客対策の全体像:規約・誓約書・店内掲示・運用の役割分担

サロンの迷惑客対策は、四つの道具の組み合わせでできています。来店客全員に向けた「利用規約」、気になる来店客や初回の来店客に個別に署名してもらう「誓約書」、店内や予約画面での「掲示・表示」、そして施術者と管理者の「運用ルール」です。規約や誓約書だけを厚くしても、現場で誰も止められなければ意味がありません。逆に運用だけで規約がなければ、止めた理由を説明できず、後から争いになります。

場面ごとの「置き場所」と根拠
場面書く場所主に関係する法律
禁止事項(性的な要求、撮影、つきまとい、暴言)規約の禁止事項の条、予約画面の要約、店内掲示民法の定型約款(548条の2)、刑法、性的姿態撮影処罰法、ストーカー規制法
施術の中止・退店・以後の利用停止規約の中止・解除の条、誓約書消費者契約法8条・8条の2・10条
違約金、返金しない旨の定め規約と誓約書。両方に書く場合は同じ内容にそろえる消費者契約法9条1項1号・2項、10条
口コミ・SNS投稿規約の投稿の条、誓約書消費者契約法10条、刑法230条・233条、情報流通プラットフォーム対処法5条
防犯カメラ・本人確認規約、プライバシーポリシー、店内掲示個人情報保護法17条・18条・21条・27条
スタッフを守る運用運用マニュアル、スタッフとの契約書労働施策総合推進法33条(雇用する労働者)

規約の位置づけも確認しておきます。来店客に画一的に適用するために店が準備した条項の総体は、民法の「定型約款」に当たる場合があります。定型約款は、利用者が個々の条項を読んでいなくても、約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していれば、個別の条項にも合意したものとみなされます(民法548条の2第1項2号)。ただし、相手方の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意をしなかったものとみなされます(同条2項)。「表示しているから何を書いてもよい」わけではない、という点が出発点です。規約を変更するときは、効力発生時期を定め、変更内容をインターネットなど適切な方法で周知する必要があります(同法548条の4第2項・第3項)。

誓約書は、個別に署名を得る点で規約と違います。ただ、署名があっても、消費者契約法で無効とされる部分は無効のままです。誓約書の役割は、「禁止事項を知ったうえで来店した」という事実と、防犯カメラや本人確認など個別の同意が必要な事項の確認を残すことにあります。規約の内容を重ねて書くだけの誓約書にすると、規約と一文字でも食い違った瞬間に、どちらが有効かが争点になります。

実務での注意点:来店客向けの規約と誓約書に盛り込む項目

  • 来店客向けの規約と誓約書は、サロンの業態や規模に合わせて、分量や構成を変えて作ります。来店客全員に向ける規約は読みやすい分量にとどめ、気になる来店客や初回の来店客に署名してもらう誓約書には、個別の確認事項を集めるのが一般的な設計です。
  • 誓約書に置かれることが多い項目は、防犯カメラの設置と映像の取扱い、来店時の本人確認、違約金、口コミ(レビュー)の投稿の扱いです。
  • このページの条項例と法律の整理は、特定のサロンの規約ではなく、条文で確認できる一般情報にもとづく一般的な設計の例です。実際に使う場合は、サロンの業態と運用に合わせて作り直します。

禁止事項の書き方:性的な要求、盗撮・録音、つきまとい、私的連絡先の要求

禁止事項は、「何を禁止するか」と「違反したらどうなるか」を一組で書きます。禁止だけを並べると、違反があっても店が取れる行動が決まらず、現場が迷います。また、規約に書くのは「サロンと来店客の間のルール」です。刑法などで犯罪になるかどうかは、規約の文言とは別に、事実と条文の要件で決まります。規約に書いたからといって、その行為が犯罪になるわけではありません。

主な迷惑行為と、規約での書き方・法律上の位置づけ
行為規約への書き方法律上の位置づけ(例)
性的なサービスの要求、施術者の体への接触サービスの範囲外であることを明記する。要求や接触があれば、警告なしで中止できると書く暴行・脅迫を用いるなど条文の要件を満たす場合は、刑法176条(不同意わいせつ)が問題になりうる。要件を満たすかどうかは事実による
施術者や他の来店客、施術室の撮影撮影の禁止。疑いがあるときは、画像の提示を求め、応じなければ中止・退店とする正当な理由なく、ひそかに、性的な部位や下着などを撮影する行為は、性的姿態撮影処罰法2条1項1号の対象(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。だまして撮影する場合なども同条の別の号が定める
施術の録音・録画施術者や他の来店客の声や姿が入るため、事前の承諾を要すると書く録音そのものが直ちに違法とは限らない。規約上の禁止(契約違反)として扱い、中止の根拠にする
つきまとい、待ち伏せ、私的な連絡先の要求施術者の私的連絡先の質問・要求、店外での接触の禁止。施術者のSNSの特定や接触も含めて書くストーカー規制法2条の「つきまとい等」は、恋愛感情等を充足する目的が要件。目的が認められない場合は、別の法律や規約違反として扱う
暴言、大声、長時間の居座り、他の来店客への迷惑施術者・他の来店客への暴言、威圧、営業の妨害の禁止。退店の求めに応じない場合の扱い威力を用いて業務を妨害すれば刑法234条(威力業務妨害)。退去を求められても退去しなければ刑法130条(不退去)の問題になりうる
飲酒・酩酊、薬物の影響下での来店安全に施術できないと判断した場合は、施術をお断りする旨施術の安全に関わる。断った場合の料金・予約枠の扱いも書く

表の二行目のように、疑いの段階の対応は特に慎重に書きます。店は、来店客のスマートフォンを取り上げたり、画像を強制的に消去させたりすることはできません。規約には「画像の提示を求めることがある」「応じていただけない場合は、施術を中止し、退店をお願いする」までを書き、強制の手段は書かないのが安全です。撮影が実際に行われた疑いが強いときは、その場で追及を続けるより、施術を中止して来店客と施術者を離し、警察に相談する方が、施術者の安全にも証拠の保全にもつながります。

禁止事項の条項例(一般的な設計の一例)

第○条(禁止事項)

お客様は、次の各号の行為をしてはなりません。(1) 施術の範囲外のサービスを求める行為、施術者の体に触れる行為。(2) 施術者、他のお客様、施術室、店内を、当店の承諾なく撮影・録音する行為。(3) 施術者の私的な連絡先を尋ねる行為、店外で接触しようとする行為。(4) 施術者や他のお客様に対する暴言、威圧、その他営業を妨げる行為。(5) 飲酒・薬物の影響等により、安全に施術を受けられない状態での来店。

第○条(中止・退店)

前条に違反した場合、または違反のおそれが高いと施術者が判断した場合、当店は施術を中止し、退店をお願いすることがあります。この場合の料金等の取扱いは第○条によります。

禁止事項と中止の書き方の比較(一般的な設計例)

中止の判断を誰がするか

避けたい書き方当店が不適切と判断した場合は、いつでも即時に退店とし、料金は返金しない。

整えた書き方禁止事項の各号に該当する行為があった場合、または施術者が安全に施術を続けられないと合理的に判断した場合に、施術を中止する。その時点までに提供した施術の対価と、提供していない部分の扱いは第○条による。

判断の範囲を広く事業者に委ねる書き方は、消費者契約法8条の2(解除権の放棄)や10条の主張を受けやすくなります。中止の要件を各号に結び付け、料金の扱いを別条に分けると、後で説明できます。

撮影の疑いがあるとき

避けたい書き方撮影した画像データはすべて当店が確認し、削除させる。

整えた書き方撮影の疑いがあるときは、画像の提示をお願いすることがあります。応じていただけない場合は、施術を中止し、退店をお願いします。

店に強制する権限はないため、強制を前提にした文言は実際に使えません。使えない条項を置くと、規約全体への信頼も下がります。

施術の中止・退店・利用停止:段階をそろえて、記録を残す

迷惑行為への対応は、行為の重さによって段階を分けます。軽い行為は、注意から始めます。性的な接触や盗撮の疑いは、段階を飛ばして、直ちに中止します。段階をあらかじめ決めておくと、施術者が一人で「止めてよいのか」と悩む時間がなくなり、来店客に対しても毎回同じ基準で対応できます。

対応の段階(一例)

  1. 注意禁止事項に当たる行為があったとき、口頭で、施術の範囲外であることと規約の該当条を伝える。
  2. 警告改まらないときは、「これ以上続くと施術を中止します」と伝える。この時点で、管理者または別のスタッフに知らせる。
  3. 中止警告後も続く場合、または重い行為(接触、撮影の疑い)のときは、施術者の判断で直ちに中止する。施術室から出る。
  4. 退店管理者が、できれば複数名で、退店をお願いする。応じないときは、警察への連絡を判断する。身の危険があるときはためらわない。
  5. 記録・停止日時、場所、担当者、行為の内容、伝えた言葉、相手の対応を記録する。以後の予約を受けない場合は、予約システムに印を付け、受付全員で共有する。

記録は、後日の争いのためだけでなく、次の対応を一貫させるために残します。記録には、評価の言葉(「悪質だった」など)より、事実(「○時ごろ、施術中に手を伸ばして施術者の体に触れた」など)を書きます。記録に個人情報が含まれるため、保管場所と閲覧できる人を限り、保存期間を決めます(個人情報の扱いは後の章で整理します)。

次に、中止したときの料金とコースの扱いです。来店客の側の違反で施術を中止した場合でも、何も決めていなければ、提供済みの部分の対価、未提供の部分、前払いの残りの扱いで争いになります。規約には、少なくとも次の三点を分けて書きます。

中止・退店の場面での料金の整理
項目書き方の考え方注意
その日の施術料金中止までに提供した部分の対価を請求できる、と書く。施術を始める前に中止した場合は、請求しない扱いにするか、準備に要した実費にとどめる全額請求とすると、提供していない部分についての請求になり、争いになりやすい
回数券・コースの残り来店客側の違反による中止であることを理由に、残りの施術を提供しない場合の精算方法を、別の条に書く契約の解除や残額の返金を一律に否定する書き方は、消費者契約法9条・10条の問題になる。コース契約の中途解約の上限はクーリング・オフと中途解約のページで整理している
予約済みの次回分以後の予約を受けない旨と、キャンセル扱いの料金を書く予約の取消しと違約金の定めは、予約の規約と重複しやすい。キャンセルの一般ルールは利用規約・プライバシーポリシーのページに譲り、本ページの規約では迷惑行為による場合だけを書く

なお、特定継続的役務提供(1か月を超え、5万円を超えるエステのコース)に当たる契約では、来店客のクーリング・オフや中途解約の権利は、店が決めた規約で奪うことができません。来店客に違反があったからといって、これらの権利がなくなるわけではないため、「違反した場合は一切の権利を失う」という書き方は避けます。コース契約の該当判断は特定継続的役務提供のページを参照してください。

利用停止(出入り禁止)の通知は、書面またはメッセージで、理由となった行為の日と、規約の該当条を示して行います。口頭だけで伝えると、後で「聞いていない」と言われたときに説明できません。再来店された場合の対応(その場で断る、警察に相談するなど)も、あらかじめ決めておきます。

違約金・返金しない条項と消費者契約法:8条・9条・10条の限界

来店客が個人(事業として契約する場合を除く)であれば、サロンとの契約は消費者契約法の「消費者契約」です(同法2条)。迷惑客対策の条項は、この法律の三つの条文にぶつかりやすいため、整理しておきます。

消費者契約法の主な条文と、迷惑客対策の条項への影響
条文内容迷惑客対策の条項で問題になる例
8条1項1号・3号事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任を全部免除する条項、責任の有無を事業者が決める条項は無効「施術中の事故・トラブルについて当店は一切責任を負わない」「責任の有無は当店が判断する」
8条1項2号・4号、3項故意または重大な過失による場合に、責任の一部を免除する条項、責任の限度を事業者が決める条項は無効。一部免除の条項は、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないと無効(3項)「賠償は施術料金の範囲に限る」と書き、故意・重大な過失を除く旨を明らかにしていない場合
8条の2事業者の債務不履行による消費者の解除権を放棄させる条項は無効「当店の都合で施術を変更・中断しても、お客様は契約を解除できない」
9条1項1号契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金で、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な損害を超える部分は無効「違反があったときは、違約金として○円を支払う」の○円が、実際の損害に比べて高すぎる場合
9条1項2号支払の遅れに対する損害賠償の予定・違約金は、年14.6%を超える部分が無効代金の支払が遅れたときの遅延損害金
9条2項違約金の請求時に説明を求められたら、算定根拠の概要を説明するよう努める請求前に、算定の考え方を社内で整理しておく
10条消費者の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効「当店が不適切と判断した場合は、理由を示さずいつでも利用を停止でき、前払い分は返金しない」など、他の条文に当たらない広い条項

迷惑行為に関する違約金の定めは、二つに分けて考えると整理しやすくなります。一つは、契約の解除に伴う違約金です。例えば、迷惑行為を理由に施術を中止して契約を解除し、その際に違約金を請求する場合です。これは9条1項1号の対象になりえて、「同種の契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な損害」を超える部分が無効になります。サロンでいえば、空いた予約枠で得られたはずの利益や、準備にかけた費用などが、損害の内容として考えられます。もう一つは、迷惑行為そのものによる実際の損害、例えば備品の破損、清掃や消毒の費用、他の来店客への対応にかかった費用です。これらは、「実費を請求する」と書き、金額をあらかじめ決めない方が、後で説明しやすくなります。一律の高額な違約金を「迷惑料」として置くと、9条や10条で無効とされる可能性が高く、規約全体への信頼も損ないます。

違約金・返金・免責の書き方の比較(一般的な設計例)

違反時の金銭

避けたい書き方禁止事項に違反したお客様は、違約金として一律に○円を支払う。

整えた書き方禁止事項の違反により当店に損害(備品の破損、清掃・消毒の費用など)が生じたときは、その実費を請求することがあります。解除に伴う料金は第○条によります。

一律の金額は、平均的な損害を超えるかどうかの説明が必要になります。実費請求にして、金額の根拠を記録しておく方が、請求時に説明できます(9条2項)。

返金しない旨

避けたい書き方理由のいかんを問わず、一切返金しない。

整えた書き方提供済みの施術の対価を除き、前払いの残りは、第○条の精算方法により返金します。ただし、法令で定める場合を除きます。

提供していない部分についてまで一律に返さない書き方は、10条の主張を受けやすくなります。精算の計算式を書いておくと、解約・中止のどちらの場面でも使えます。

責任の限定

避けたい書き方施術中・店内での事故やトラブルについて、当店は一切の責任を負わない。

整えた書き方当店の故意または重大な過失による場合を除き、損害賠償の範囲を、通常生ずべき損害に限ります。

全部免責は8条1項で無効です。一部免責は、故意・重大な過失を除くことを条項上で明らかにしないと、8条1項2号・3項により無効とされるおそれがあります。

来店客が事業として(例えば自分の事業のために)契約する場合は、消費者契約法の対象外です。ただし、サロンの来店客はほとんどが個人であり、事業者か個人かを予約時に見分けることは難しいため、規約は消費者を前提に設計するのが実務的です。

口コミ・低評価の投稿を禁じる条項の限界と、誹謗中傷への対応

来店客規約に「口コミの投稿を禁止する」と書くサロンがあります。事実と異なる投稿や、施術者を中傷する投稿を止めたい気持ちは当然です。ただ、「低評価を付けるな」という内容にまで広げると、正当な感想や批判まで禁じることになり、消費者契約法10条で無効とされる可能性が高くなります。契約で止められる範囲と止められない範囲を分けて考えます。

投稿の種類と、規約・法律でできること
投稿の種類規約で禁止できるか店ができる対応
事実に基づく感想・低い評価禁止はできない(禁止する条項は10条で無効とされるおそれが高い)投稿への返信、改善の対応。削除を求める根拠は通常ない
事実に反する内容、誤解を招く内容規約で「事実に反する投稿をしない」と定めることはできる投稿先のサービスへの削除申出。内容により、名誉毀損や業務妨害の問題になりうる(刑法230条・233条)
施術者個人の氏名や写真を挙げた中傷禁止できる。他の来店客や従業員の個人を特定できる情報の投稿を禁じる条項は、一般に合理的投稿先への削除申出、記録の保存、状況により警察への相談
施術室内の画像、他の来店客が写る画像撮影禁止と一体で、投稿の禁止を定めることができる撮影の経緯の確認、投稿先への申出
好評価と引き換えに割引を受けた投稿店側が依頼する場合は、広告である旨の表示を求める必要があるエステの広告表示のページで、依頼の方法とステルスマーケティング規制を整理している

「低評価の投稿に対して違約金を課す」という条項は、投稿の自由を不当に制限し、平均的な損害の説明もできないため、実務上は避けるべきです。規約に置くなら、「事実に反する内容、従業員その他の個人を特定して中傷する内容、他のお客様が特定できる内容、施術室内の画像を投稿しないでください」という書き方にとどめ、「正当な感想や評価を妨げるものではありません」と添えます。

口コミ・SNS投稿の条項例(一般的な設計の一例)

第○条(投稿)

お客様は、当店のサービスについてインターネット上に投稿する場合、次の内容を含めないでください。(1) 事実に反する内容。(2) 従業員その他の個人を特定したうえでの誹謗中傷。(3) 他のお客様が特定できる情報、施術室内や施術中の画像・動画。本条は、お客様が体験に基づく感想や評価を述べることを妨げるものではありません。

第○条(削除の依頼)

前条に反する投稿を当店が確認した場合、当店はお客様に対し、削除をお願いすることがあります。

規約で止められない投稿のうち、事実に反する中傷については、法律上の手続があります。インターネット上の情報の流通で権利を侵害された人は、投稿の場を提供する事業者などに対し、発信者の情報の開示を請求できます。この制度を定める法律は、2025年4月1日の施行で、かつての「プロバイダ責任制限法」から「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法)」へと名称が改められました。開示を請求できるのは、権利が侵害されたことが明らかであり(同法5条1項1号)、損害賠償請求のために必要であるなど開示を受けるべき正当な理由がある(同項2号)ときです。請求が任意に認められない場合に備えて、裁判所に対する発信者情報開示命令の手続(同法8条)、発信者情報の提供を命じる提供命令(15条)、消去を禁じる消去禁止命令(16条)が設けられています。

規約には、ここまでを詳しく書く必要はありません。「事実に反する中傷や営業の妨害に当たる投稿については、投稿先への削除の申出や、法律に基づく手続を取ることがある」とだけ書き、予告として機能させます。実際に中傷が起きたときに備えて、運用面では、投稿の画面保存(投稿日時とアドレスが分かる形)を早めに残します。時間が経つと投稿者の特定に必要な記録が残らないことがあるため、気づいた時点で先に記録します。投稿が施術者個人に向けた中傷である場合は、被害を受けているのは個人であり、店だけの問題ではありません。施術者本人の意思を確認しながら進めます。

防犯カメラ・本人確認・個人情報:利用目的と警察への提供

防犯カメラの映像や、身分証による本人確認で得た情報は、個人情報にあたる場合があります。サロンが個人情報取扱事業者であれば、利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条1項)、取得したときは速やかに利用目的を本人に通知または公表します(21条1項)。取得の状況からみて利用目的が明らかな場合は例外とされています(同条4項4号)が、防犯カメラの目的は、来店客にとって自明とは限りません。店内への掲示と、プライバシーポリシーへの記載の両方で示しておくのが安全です。

取得する情報と、利用目的・注意点
情報利用目的の書き方注意点
防犯カメラの映像防犯、迷惑行為・事故・紛争の確認、必要に応じた警察等への提供設置場所を、受付・待合・出入口などに限る。施術室内や更衣のスペースは、来店客のプライバシーへの影響が大きいため設置しない、または設置しない旨を決める
本人確認の書類の確認結果予約・来店者の確認、なりすまし・迷惑行為の防止書類のコピーを取って保管するのか、目視で確認するだけにするのかを決める。コピーを取るなら、保存期間と廃棄の方法を決める
迷惑行為の記録(日時、行為、対応)迷惑行為の再発防止、利用の可否の判断個人データとして扱う。保存期間と閲覧できる人を決める。他の店舗や事業者と共有すると、第三者提供の制限(27条)の問題になる

映像や記録を警察に提供するときは、個人データの第三者提供の制限(27条)を確認します。本人の同意を得ない第三者提供が許されるのは、同条1項に列挙された場合です。「法令に基づく場合」(1号)や、国の機関が法令の定める事務を遂行することに協力する必要がある場合で、本人の同意を得ることによって事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき(4号)が、警察への提供の場面で問題になります。捜査機関が、捜査について公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることは、刑事訴訟法197条2項に定められています。照会書を受け取ったときは、照会の目的と求められている範囲を確認して、必要な範囲で応じます。ただし、この二つの条文に当たるかどうかは、照会の内容や状況によって個別に判断することになります。規約には、「防犯・事故・紛争の確認、警察など公的機関への提供のために利用する場合があります」と、利用目的の一つとして書いておきます。

防犯カメラ・本人確認の条項例(一般的な設計の一例)

第○条(防犯カメラ)

当店は、防犯および迷惑行為・事故・紛争の確認のため、受付、待合、出入口に防犯カメラを設置し、映像を記録します。施術室内には設置しません。映像は、これらの目的の範囲で利用し、法令に基づく場合その他法令で認められる場合を除き、第三者に提供しません。

第○条(本人確認)

当店は、ご予約・ご来店の際に、本人確認のためのお願いをすることがあります。確認した情報は、お客様の確認と迷惑行為の防止のために利用し、保存期間を定めて管理します。

これらの内容は、プライバシーポリシーと矛盾しないように書きます。規約では「記録します」、プライバシーポリシーでは「記録しません」と食い違うと、利用目的の特定に問題が生じます。予約の規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表記の書き方は、利用規約・プライバシーポリシーのページで整理しています。

スタッフを守る運用:受付・中止権限・相談窓口・男性客の方針

迷惑行為の被害を受けるのは、多くの場合、施術者個人です。規約と誓約書は店を守る道具ですが、施術者を守るのは運用です。次の五つを決めておきます。

スタッフを守る運用の点検リスト

  • 受付で、初回の来店客に規約と誓約書を提示し、同意を得てから施術に入る手順になっている。
  • 予約の段階で、禁止事項の要約と、男性客・同伴者の受け入れ方針(受け入れる、女性の施術者は担当しない、受け入れないなど)を表示している。
  • 施術者が「中止します」と言える権限が、規約と運用ルールに書かれ、中止したことで不利益な扱いを受けない。
  • 施術者が一人の時間帯について、緊急時の連絡先(別のスタッフ、管理者、警察)と合図の方法が決まっている。
  • 被害を受けた施術者が相談できる窓口が決まっていて、相談したことを理由に不利益な扱いをしない。

男性客の受け入れ方針は、サロンの業態によって異なります。女性向けのサロンであることを明確にして男性客を受けない、男性客は男性の施術者が担当する、同伴者のみ待合を認める、といった選択肢があります。大切なのは、方針を事前に表示することと、理由と例外の扱いを決めておくことです。当日の窓口で個別に判断すると、担当者によって対応がぶれ、苦情の原因になります。

雇用する従業員については、2026年10月1日から、事業主に新しい措置義務があります。労働施策総合推進法33条1項は、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業に関係を有する者の言動で、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、その言動への対応の実効性を確保するために必要な抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。労働者が相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁止されています(同条2項)。この条文の対象は「雇用する労働者」です。業務委託で施術を行う個人は、この条文の対象ではありません。なお、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)14条は、従業員を使用する委託事業者に、業務委託に関して行われる一定の言動への相談体制の整備などを求めていますが、来店客の言動への対応を求める規定とは条文上は読み取れません。とはいえ、委託契約の施術者が来店客の迷惑行為を受けたときも、中止の権限と相談の窓口を設けておく実務上の必要は、雇用する従業員と変わりません。業務委託の施術者との契約の作り方はエステティシャンの業務委託契約書のページで整理しています。

出張で施術を行う場合は、施術の場所が来店客の自宅やホテルの客室になるため、サロン内に比べて、施術者が一人で対処しなければならない場面が増えます。その場合の契約と運用は出張エステ・出張リラクゼーションのページに譲ります。

起きがちなこと:迷惑客対策でつまずく場面

  • 禁止事項は詳しいのに、中止・退店を誰が判断するかが書かれておらず、現場の施術者が一人で悩む。
  • 「当店が不適切と判断した場合は即時退店、返金しない」と包括的に書き、コース契約の来店客に使おうとして、消費者契約法の主張を受ける。
  • 迷惑料として一律の高額な違約金を置き、請求したときに平均的な損害の説明ができない。
  • 口コミを広く禁止する条項を置いた結果、正当な批判まで止める条項になり、かえって炎上の材料にされる。
  • 防犯カメラを設置しているのに、掲示も規約への記載もなく、利用目的を示していない。
  • 撮影の疑いで、来店客のスマートフォンを預かったり、画像を店で消したりして、店側が問題を抱える。
  • 誓約書の署名が、規約と食い違う内容になっていて、どちらを根拠にするのか決まらない。
  • 雇用する従業員への措置義務(2026年10月1日施行)と、業務委託の施術者への対応を区別せず、委託の施術者には何も用意していない。

迷惑客対策は、一度作って終わりにしません。実際に起きた事案を記録し、規約・誓約書・運用のどこで止められたか、止められなかったかを見直して、条項を調整します。そのとき、変更後の規約は効力発生時期を定めて周知し(民法548条の4第2項)、誓約書も新しい版に差し替えます。

よくあるご質問

規約や誓約書に違約金を書いておけば、迷惑客に請求できますか?

請求できるとは限りません。迷惑行為を理由に契約を解除する際の違約金は、消費者契約法9条1項1号により、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な損害を超える部分が無効です。一律の金額より、備品の破損や清掃費用などの実費を請求する書き方の方が、根拠を説明しやすくなります。

口コミを投稿しない旨の誓約書を取れば、低い評価の投稿も止められますか?

止められません。事実に基づく感想や批判まで禁じる条項は、消費者契約法10条で無効とされるおそれが高くなります。規約で禁止できるのは、事実に反する内容、従業員など個人を特定した中傷、他の来店客が特定できる情報や施術室内の画像といった範囲にとどめるのが現実的です。

防犯カメラの映像を警察に出すとき、来店客の同意は必要ですか?

本人の同意なしに第三者へ提供できるのは、個人情報保護法27条1項に列挙された場合に限られます。法令に基づく場合などが問題になりますが、照会の内容や状況で個別に判断します。規約とプライバシーポリシーに、警察など公的機関への提供を利用目的の一つとして書いておくと、運用の根拠が整います。

施術中に盗撮が疑われたら、どう対応すればよいですか?

施術を中止し、来店客と施術者を離します。スマートフォンを取り上げたり、画像を店で削除させたりすることは避け、画像の提示を求めても応じないときは退店をお願いします。疑いが強いときは警察に相談し、日時・場所・状況を記録します。性的姿態撮影処罰法2条は、ひそかに性的な部位等を撮影する行為を処罰の対象としています。

誹謗中傷の投稿をした人を特定することはできますか?

権利が侵害されたことが明らかで、損害賠償請求のためなど開示を受けるべき正当な理由があるときは、情報流通プラットフォーム対処法5条1項に基づき、発信者情報の開示を請求できます。任意に応じない場合は、裁判所の発信者情報開示命令の手続(同法8条)があります。投稿の画面は、日時とアドレスが分かる形で早めに保存しておきます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別のサロンに必要な対応は、メニュー、使用する機器、料金の受け取り方、勧誘の方法によって異なります。事務所の作成例・相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたエステサロン・美容施術サービスの契約書、法定書面、規約、同意書、業務委託契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 厚生労働省 / 国民生活センター

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