このページの要点
- 紹介者の特典は、割引券ならば自社の取引で使う割引券として整理しやすく、別メニューの無料券や物品は景品類として上限の範囲に収める。
- 総付景品の上限は、取引価額1,000円以上なら取引価額の10分の2。被紹介者への贈呈品と他の景品は同一事業者分を合算して数える。
- 紹介者に入会金や商品購入を求め、紹介の成果に連動する報酬を出すと、特定商取引法33条の連鎖販売取引の確認が必要になる。
- 事業者が依頼したアンバサダーの投稿は、広告と判別できる表示が必要。効果を断定する表現も事業者の表示として問題になる。
友人紹介・アンバサダー制度で通る三つの関門
最初に押さえたいのは、紹介制度を一つの法律で見ないことです。同じ「紹介」でも、特典の相手と、紹介者に求める負担の有無で、当てはまる規制が変わります。設計の段階で次の三つを順に確認すると、後から制度を作り直す手間が減ります。
紹介制度を作るときの確認の順番
- 関門1景品規制:紹介された人・紹介した人に渡す特典が「景品類」に当たるか。当たるなら、取引価額に応じた上限の範囲か。
- 関門2連鎖販売取引:紹介者を会員やアンバサダーとして組織に加え、紹介の成果に連動する利益を示し、本人に金銭の負担を求めていないか。
- 関門3広告表示:紹介者・アンバサダーの投稿が事業者の広告と判別できるか。効果の表現が実際より良く見えないか。
エステサロンの紹介制度は、おおむね次の五つの型に分かれます。型ごとに、まず見る関門が違います。
| 型 | 内容の例 | 最初に見る関門 |
|---|---|---|
| 被紹介者への初回優待 | 友人紹介の来店で、初回体験を割引または追加メニュー付きにする | 景品規制(値引きか、景品類か) |
| 紹介者への次回特典 | 紹介が成立した会員に、次回の施術料金の割引券や、別メニューの無料券を渡す | 景品規制(割引券か、特定メニューの引換券か) |
| 紹介者へのポイント・金銭 | 紹介成立ごとにポイントや現金を付与する | 景品規制と、紹介者の登録条件(連鎖販売取引) |
| アンバサダー(投稿型) | 無料施術や割引と引き換えに、SNSで体験を投稿してもらう | 広告表示(ステマ規制)と、景品規制との線引き |
| アンバサダー(会員組織型) | 入会金や商品購入で認定し、紹介実績に応じて報酬やランクを与える | 連鎖販売取引 |
このうち、制度の設計で最も見落とされやすいのは、一番上の「値引き」と「景品類」の線引きと、一番下の「負担を求めた認定」です。エステでは、コース契約が特定継続的役務提供に当たるかどうか(エステが特定継続的役務提供に当たる条件)も紹介特典の設計に影響するため、後の節で併せて触れます。
友人紹介割引は「値引き」か「景品類」か:運用基準の見方
景品類とは、顧客を誘引するための手段として、自社の商品・サービスの取引に付随して提供する物品、金銭、その他の経済上の利益をいいます。消費者庁の運用基準は、提供する側の主観や企画の名目は問わず、客観的に顧客を誘引する手段になっているかで判断するとしています。親睦や謝恩のために渡す物でも、景品類と認められることがあります。新規客を呼ぶ目的だけでなく、取引の継続や取引量の増大を誘うための提供も含まれます。つまり、既存の会員に再来店を促す特典も対象です。
そのうえで、運用基準は、正常な商慣習に照らして値引きと認められる経済上の利益は、景品類から外れるとしています。たとえば、取引通念上妥当な基準で支払うべき対価を減額すること(複数回の利用を条件に減額する場合を含む)や、同じ対価で同一の役務を付け加えること(「5回ご利用で1回無料」のような形)は、原則として値引きにあたります。一方で、懸賞による場合、減額した金額の使い道を制限する場合、同じ企画の中で景品類の提供も併せて行う場合は、値引きとは認められません。「○○プレゼント」「○○無料」のように、相手に景品類と受け取られる仕方で渡すと、複数の役務を組み合わせた取引でも、取引に付随する提供とされます。
| 特典 | 渡す相手 | 整理の方向 |
|---|---|---|
| 初回体験を通常より安くする | 被紹介者 | 被紹介者自身の取引の対価を下げるものなので、取引通念上妥当な範囲なら値引きと整理しやすい。ただし、割引と同じ企画で物品も渡すと、値引きとは認められない |
| 初回体験に、別の物品(化粧品の小分けなど)を付ける | 被紹介者 | 景品類。総付景品の上限の対象になる |
| 次回の施術で使える○円割引券 | 紹介者 | 自社の取引で使う割引券は、総付景品の上限の例外とされる証票に当たりうる。ただし、公正な競争秩序の観点から判断される |
| 別メニュー(ハンドケアなど)の無料券 | 紹介者 | 割引券ではなく、特定の役務との引換えなので、景品類として上限の範囲に収める |
| 紹介成立ごとの現金・商品券 | 紹介者 | 景品類として扱う。上限の範囲に収める。現金の場合は連鎖販売取引の確認も必要 |
| 紹介者に限定せず、誰でも受け取れる謝礼 | 紹介してくれた人 | 運用基準は、購入者を紹介してくれた人への謝礼は取引に付随しないとする。ただし、紹介者を購入者に限定する場合は別(次の節) |
表の三行目と四行目の違いが、実務では見落とされます。運用基準が値引きの例として挙げているのは、購入額や利用回数を条件に代金を下げる形です。「紹介が成立したこと」は、本人の取引ではなく、他人の来店という別の事実を条件にした提供です。そのため、紹介者への特典を「値引きだから景品ではない」と言い切ることはできません。紹介者への特典は、割引券の形にするか、景品類として上限の範囲に収めるか、どちらかで設計するのが安全です。
紹介者への特典の書き方の比較(一般的な設計例)
特典の名称と中身
避けたい書き方紹介してくださった方に、お好きな施術を1回プレゼントします。
整えた書き方紹介が成立した会員に、次回の施術料金から○円を割り引く割引券を差し上げます。割引券は他の割引と併用できません。
「お好きな施術をプレゼント」は、取引に付随する景品類として、上限の確認が必要になる書き方。金額を示した割引券なら、自社の取引で使う割引券として整理しやすい。
総付景品の上限と計算:初回体験・コース契約でどう数えるか
景品類のうち、くじなどの偶然性や優劣によらず、利用者にもれなく渡すものを「総付景品」といいます。購入の申込み順や来店の先着順で渡す場合も、総付景品に含まれます。消費者庁が公表している上限は、取引価額が1,000円未満のときは200円、1,000円以上のときは取引価額の10分の2です。紹介特典は、紹介が成立した全員に渡す設計が普通なので、まず総付景品の上限で考えます。
悩みやすいのは、「取引価額」を何円として数えるかです。運用基準は、サービスを提供する事業者が景品を渡すときは、対象となる役務の実際の取引価格を基準にするとしています。場面ごとの整理は次のとおりです。
| 場面 | 取引価額 | エステでの例 |
|---|---|---|
| 購入者を対象に、購入額に応じて景品類を渡す | その購入額 | 体験コース5,000円の申込者に、5,000円を基準に上限を数える |
| 購入者が対象だが、購入額の多少を問わず渡す | 原則100円。ただし、対象の役務の通常の取引価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを使える | 最低メニューが3,000円なら、3,000円を取引価額にできる |
| 購入を条件とせず、来店者に渡す | 原則100円。店舗で通常行われる取引のうち最低のものが100円を超えるときは、その最低のもの | 無料カウンセリング来店者に渡す物は、まず100円を基準に考える |
| 同じ取引に、複数の景品類を付ける | 同一事業者の分は、別々の企画でも合算 | 友人紹介の贈呈品と、アンケート回答の景品を合わせて上限を見る |
計算例:友人紹介の来店者に、初回体験とミニボトルを付ける場合
| 初回体験の料金(取引価額) | 5,000円 |
|---|---|
| 総付景品の上限 | 5,000円 × 10分の2 = 1,000円 |
| 友人紹介の贈呈品(ミニボトル)の価額 | 600円 |
| 同じ体験に付けるアンケート回答の景品の価額 | 500円 |
| 同一事業者の景品類の合計 | 600円 + 500円 = 1,100円 |
合計1,100円が上限1,000円を100円超える。どちらかを見直す。
価額は、提供する物品を通常の販売価格などで評価して数える。算定の基準は消費者庁の「景品類の価額の算定基準」で確認する。
計算例:購入を条件とせず、無料カウンセリングに来た人に小物を渡す場合
| 購入を条件としない来店者の取引価額(原則) | 100円 |
|---|---|
| 総付景品の上限(取引価額が1,000円未満) | 200円 |
| サロンで通常行われる取引のうち最低のもの | 3,000円 |
| 最低の取引価額を基準にできる場合の上限 | 3,000円 × 10分の2 = 600円 |
最低の取引を基準にできる場合は、上限を600円として数える。
ただし、特定のメニューの案内を送って来店した人に渡すときは、そのメニューの価額を取引価額として扱う。
ここで、除外される提供にも触れておきます。総付景品の告示は、取引に必要な物品やサービス、見本その他の宣伝用の物品やサービス、自社の取引で使う割引券などを例外としています。運用基準は、宣伝用の見本の例として、化粧品売場のメイクアップサービスやスポーツスクールの一日無料体験を挙げています。ただし、役務そのものを提供するときは、最小の取引単位であって、試用のためのものである旨を明確に表示する必要があるとされています。「友人と一緒に無料体験」といった企画を作るときは、この表示を落とさないようにします(体験コースの設計は体験コースと初回限定価格のルールで扱っています)。
紹介者の中から抽選で景品を出す形にすると、総付景品ではなく懸賞になります。消費者庁の整理では、懸賞の景品の上限は、取引価額が5,000円未満のときは取引価額の20倍、5,000円以上のときは10万円で、総額は売上予定総額の2%までです。購入や来店を条件にせず、はがきやウェブサイトで応募を受けて抽選する、いわゆるオープン懸賞には、景品規制は適用されません。紹介企画に抽選を足すかどうかは、このように規制の種類が変わるため、別々の企画として設計し、規約も分けます。
紹介者を会員に限ると何が変わるか:「購入者の紹介」への謝礼の扱い
運用基準には、自社の商品や役務の購入者を紹介してくれた人への謝礼は、取引に付随する提供に当たらない、という定めがあります。ただし、紹介者を当該商品や役務の購入者に限定する場合は除かれます。エステサロンの紹介制度は、会員カードや来店履歴のある顧客だけを紹介者にするのが一般的です。つまり、実務の設計の多くは、この「除く場合」に入ります。紹介者の特典は、取引に付随する景品類として、先ほどの総付景品の上限の枠で考える必要があります。
この違いは、規約の文章に出ます。たとえば、「ご来店実績のある会員様に限り、紹介特典を差し上げます」と書くのは、紹介者を購入者に限定した書き方です。一方、「どなたでも、当サロンをご紹介いただいた場合に、謝礼を差し上げます」と書き、実際に会員でない人も受け取れる運用にするなら、取引に付随しない謝礼として整理する余地があります。ただし、後者は紹介の窓口が広がり、誰が紹介者かを把握しにくくなります。次の節で見る連鎖販売取引や、個人情報の面の確認事項が増えることにもなります。
紹介者の範囲を決めるときの問いと、その理由
紹介者になれるのは、来店実績のある会員だけですか。
会員に限ると、運用基準のいう「購入者に限定する場合」に入る。特典は上限の範囲で設計する。
紹介者の特典は、割引券ですか、無料施術ですか、物品ですか、現金ですか。
種類によって、値引き、割引券、景品類、連鎖販売取引の確認の要否が変わる。
アンバサダー制度:報酬・無料施術・投稿の三つを分けて設計する
アンバサダーは、法律上の用語ではなく、サロンが任意に付ける呼び名です。実際の中身は、無料や割引の施術を受けて投稿する人、紹介の成果に応じて報酬を受け取る人、サロンのイベントに出る人など、さまざまです。呼び名ではなく、「何の対価として」「何を渡すか」を分けて書きます。
| 役割 | 渡すもの | 規制の見方 |
|---|---|---|
| 施術を受けて投稿する | 無料または割引の施術 | 運用基準は、仕事の報酬と認められる金品の提供は景品類に当たらないとする。投稿という仕事への対価と整理できるなら景品規制の外。ただし、事業者が依頼した投稿は、ステマ規制の確認が必要 |
| 友人を紹介する | ポイント、割引、金銭 | 紹介の成果に応じた利益。紹介者が購入者に限られるなら景品規制、登録に負担があれば連鎖販売取引の確認 |
景品表示法のステルスマーケティング規制は、令和5年10月1日から施行されています。事業者が、第三者に依頼して投稿させるなど、事業者の表示であるにもかかわらず、一般の消費者がそれと判別することが困難な表示が、規制の対象です。消費者庁の案内では、規制されるのは広告主である事業者で、投稿を頼まれたインフルエンサーなどの第三者ではないとされています。つまり、サロンが「アンバサダーの個人的な感想」と思っていても、サロンが依頼して投稿してもらった内容は、サロンの広告として扱われうるということです。無料施術や割引と引き換えに投稿を依頼する場合は、投稿の見やすい位置に、広告であることが分かる表示を付けるよう、契約か規約で義務にします。
投稿の内容にも注意が必要です。「1回で小顔になった」「絶対に痩せる」のような表現を、アンバサダーが自分の言葉で書いても、サロンが依頼した投稿なら、サロンの表示として優良誤認の問題(景品表示法5条1号)になりえます。広告の表現全般はエステの広告表示で整理しています。アンバサダーとの契約では、投稿前の確認の流れと、不適切な投稿を見つけたときの修正・削除の依頼を書いておきます。
アンバサダー契約・規約の条項例(投稿の表示)
第○条(投稿の表示)
アンバサダーは、当サロンの施術または商品について投稿するときは、投稿の冒頭または見やすい位置に、「広告」「PR」「提供を受けています」など、当サロンから施術等の提供を受けていることが一目で分かる表示をしなければなりません。
第○条(投稿内容)
アンバサダーは、施術の効果について、体験した事実の範囲を超えて、効果を断定する表現、効果が誰にでも生じると受け取られる表現、他のお客様の施術結果を自分のものとして示す表現を用いてはなりません。投稿前に当サロンが内容を確認し、修正を依頼することがあります。
第○条(修正・削除)
当サロンは、前二条に反する投稿を見つけたときは、アンバサダーに修正または削除を依頼することができ、アンバサダーは速やかにこれに応じます。
紹介が連鎖販売取引になるのはどんなときか
特定商取引法33条は、連鎖販売取引を規制しています。物品の販売や有償の役務の提供の事業で、再販売や販売のあっせんをする者、または同種の役務の提供やそのあっせんをする者を、特定利益が得られると誘って、特定負担を伴う取引をさせるものです。ここでいう特定利益は、組織に入った他の人が出した対価や取引料によって得られる利益をいいます。特定負担は、商品の購入、役務の対価の支払い、取引料の提供などの経済上の負担です。施術はここにいう役務にあたりますから、エステサロンが対象外になるわけではありません。
通常の友人紹介は、紹介者になるために本人が何も払わず、サロンが自分の費用で特典を出すだけなので、ここには当たりにくい形です。問題になるのは、次の三つが重なる設計です。
- 紹介者を「会員」「アンバサダー」「ビジネスパートナー」として登録し、紹介活動をする立場にする
- 紹介の成果(被紹介者の支払い)に応じて、報酬、ポイント、ランク、割引などの利益を示して誘う
- 登録の条件として、入会金、年会費、コース契約、機器や化粧品の購入などの負担を求める
連鎖販売取引に近づいていないかの確認
紹介者になるために、金銭の支払いや商品の購入が必要ですか。
はい特定負担に当たりうる。次の問いへ進み、設計を見直す
いいえ負担がなければ、連鎖販売取引の要件の一つを欠く。ただし、コース契約者だけを紹介者にする設計では、コース契約が事実上の条件になっていないか確認する
紹介者が受け取る利益は、被紹介者の支払額や人数に連動しますか。
はい特定利益にあたりうる。連動の仕組みを見直す
いいえ定額で、サロンが自分の費用で渡す特典なら、景品規制の確認が中心になる
紹介された人が、さらに別の人を紹介して利益を得られますか。
はい紹介が二段階以上に広がる設計は、一層慎重に判断する。広がらない設計に改める
いいえ紹介が一段階で終わるなら、この点の心配は小さい
連鎖販売取引に当たると、契約の書面や勧誘の規制がかかり、契約の書面を受け取った日(再販売する商品の購入が負担で、その商品の最初の引渡しがそれより後のときは、引渡しを受けた日)から20日間はクーリング・オフができます(同法40条1項。対象は、店舗等によらないで行う個人です)。エステの特定継続的役務提供の8日間より長い期間です。制度を設計した後で「入会金をいただいているが、アンバサダー報酬も出している」という状態になっていたことに気づくと、契約をさかのぼって整える負担が大きくなります。
| 場面 | 見るべき点 |
|---|---|
| アンバサダー認定の入会金や年会費と、紹介報酬を組み合わせる | 入会金・年会費が特定負担、紹介報酬が特定利益にあたりうる |
| 認定アンバサダーに美容機器や化粧品の購入を求め、友人の紹介に報酬を出す | 商品の購入が特定負担。仕入れ義務がなくても、実質的に購入が必要になっていないかを見る |
| エステスクールの受講者に、受講生の紹介報酬を出す | 受講料が特定負担、紹介報酬が特定利益にあたりうる。受講契約の整備はエステ養成講座・スクールの契約で扱っている |
| サロンのオーナー募集と、募集した人の売上に連動する報酬を組み合わせる | 加盟金が特定負担。フランチャイズの整理は事業譲渡・フランチャイズのページで扱っている |
なお、割引や無料施術の形で利益を渡す場合に、特定利益として扱われるのかどうかは、制度の内容によって判断が分かれるため、個別に確認が必要です。現金でないから規制の対象外、とは言い切れません。
コース契約・解約・個人情報で紹介制度が崩れやすい点
紹介制度は、特典を渡した後の処理で問題が出ます。エステでは、次の三つがよく問題になります。
- 被紹介者がキャンセルした場合の特典:紹介者に特典を渡した後で、被紹介者が契約をクーリング・オフしたり中途解約したりすると、特典の扱いが問題になります。規約に「紹介の成立」の定義(来店した日か、初回料金を支払った日か)を書いておかないと、取消しも返還も請求できません。
- 紹介特典を契約に組み込んだ場合の書面:コース契約に「友人紹介で回数を追加する」と書くと、回数や総額が変わり、契約書面の記載(概要書面・契約書面の作り方)とずれます。特典の無料回数は、契約書面の明細に含めるか、契約とは別の特典として区別するか、どちらかに決めます。
- 解約時の精算:紹介割引を使ったコースを中途解約したとき、割引後の単価で提供済みの回数を計算するのか、通常単価なのかを決めておきます(クーリング・オフと中途解約の計算)。書いていないと、お客様と計算の前提がずれます。
個人情報の面でも、紹介制度には注意点があります。紹介者に、友人の氏名や電話番号をサロンへ入力してもらう方式は、サロンが本人の個人情報を取得した時点で、利用目的を本人に通知するか公表する必要があります(個人情報保護法21条1項)。また、紹介者に「ご友人が予約されました」と知らせる運用は、被紹介者の個人データを紹介者に伝えることになり、あらかじめ本人の同意が原則として必要です(同法27条1項)。被紹介者が自分で入力する紹介コード方式にし、紹介者には特典の付与だけを知らせる設計にすると、この問題を避けられます。個人情報の取扱いの文面は利用規約・プライバシーポリシーの整理を使います。
よくある失敗と直し方、ヒヤリングで確認すること
紹介制度の規約や契約書でよく見られる書き方と、その直し方を整理します。
紹介報酬を払うアンバサダー・紹介者との契約で見落とされやすい点
お客様ではなく、事業として紹介をする人(個人事業主や法人の美容系アンバサダーなど)に報酬を払う契約では、次の点が抜けやすくなります。実務で作られている紹介規約やアンバサダー契約には、共通して次の型があります。
- 報酬の発生条件:紹介の成立を「登録の承認」と「対象取引の成立」の二段階で定義し、さらに、返金・キャンセルになった取引は報酬の対象から外す。エステでは、クーリング・オフや中途解約で返金が出るため、返金時の報酬の取消しと、支払済みの報酬の返還を書いておかないと、サロンだけが負担を負う。
- 対象期間:一度の紹介で、被紹介者のその後の契約にも報酬を払うのか、登録から一定期間に限るのかを決める。回数券やサブスクを扱うサロンでは、期間を決めないと報酬が無期限に続く。
- 不支給事由:紹介者と被紹介者が実質的に同一である場合、虚偽の情報で登録した場合、サロンが登録を却下・取消した場合を、具体的に書く。
- 算定の報告と異議:月ごとに対象取引の内容、発生日、金額を明細で示し、異議を申し出る期間を決める。算定の根拠を示さないと、報酬額をめぐる争いになる。
- 代理権限がないこと:紹介者は、サロンの代理や媒介の権限を持たず、そのように誤解させる説明をしてはならない、と書く。紹介者が「私と契約すれば特別価格で受けられる」と言うと、サロンの勧誘行為として問題になりうる。
- 存続条項と条番号:契約終了後も報酬を払う定めがあるのに、存続する条項の一覧に報酬条項が入っていない。条を入れ替えたあとで、他の条を引用する番号が古いまま残る。契約を直したあとは、番号の引用を全部確認する。
書き方の例(一般的な例):紹介制度の規約・契約書
特典の内容
よくある書き方紹介してくださった方には、豪華特典をプレゼントします。内容は当サロンが随時決定します。
整えた書き方紹介が成立したときの特典は、次回の施術料金から○円を割り引く割引券とします。特典の内容を変更するときは、変更日の○日前までに告知します。
特典を後から決めると、上限の確認ができず、告知した内容と実際の特典にずれが出る。種類と金額を先に決めておく。
紹介の成立
よくある書き方紹介が成立した場合に特典を付与します。
整えた書き方紹介が成立したとは、被紹介者が紹介コードを入力して予約し、初回の施術を受け、その料金を支払ったときをいいます。
「成立」の時点を決めないと、キャンセルや自己紹介のときに取消しの根拠が弱い。
不支給事由
よくある書き方不正があった場合は特典を付与しません。
整えた書き方紹介者と被紹介者が同一人物またはその同居家族である場合、被紹介者が虚偽の情報で登録した場合、被紹介者の予約が取り消された場合は、特典を付与しません。付与後に判明したときは、特典の返還を求めます。
具体的な事由を書かないと、不正かどうかの判断が争いになる。
免責
よくある書き方当サロンは、紹介制度に関する一切の責任を負いません。
整えた書き方当サロンは、紹介制度に関して、お客様に生じた損害を賠償する責任を負う場合があります。ただし、当サロン、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、お客様に生じた損害の賠償は、特典の価額を上限とします。
消費者向けの規約で責任を全部免除すると、消費者契約法8条1項1号により無効になる。上限を設けるなら、同条3項により、故意又は重大な過失による場合を除く旨を、上限を定めるその一文の中に書く。
紹介特典の条項例(一般的な設計の一例)
第○条(紹介特典)
当サロンの会員(以下「紹介者」といいます。)が、第○条の紹介コードを用いてご友人(以下「被紹介者」といいます。)を当サロンにご紹介し、被紹介者が初回の施術を受けてその料金をお支払いになったとき、当サロンは、紹介者に対し、次回の施術料金から○円を割り引く割引券を1枚差し上げます。割引券は、他の割引と併用できません。
第○条(被紹介者の優待)
被紹介者が初めて当サロンをご利用になる場合に限り、初回体験の料金を○円とします。本条の優待と、別の企画による贈呈品を同時にお受けいただくことはできません。
第○条(取消し)
被紹介者が初回の施術を受ける前に予約を取り消したとき、または次の各号のいずれかに当たるときは、当サロンは紹介特典を付与せず、付与した後であっても割引券を無効とし、または利用済みの割引額の返還を求めることがあります。(1) 紹介者と被紹介者が同一人物または同居の家族であるとき。(2) 被紹介者が虚偽の情報で予約したとき。
紹介制度をつくる前に、ヒヤリングで確認すること
紹介者に渡す特典は、割引券、無料施術、物品、ポイント、現金のどれですか。
種類によって、景品規制の上限、連鎖販売取引の確認の要否が変わる。
紹介者になるのに、入会金、年会費、コース契約、商品購入などの負担はありますか。
負担があり、紹介の成果に連動する利益を渡すと、連鎖販売取引の確認が必要になる。
被紹介者への優待と、既存の割引・贈呈品・アンケート景品を併用できますか。
同一事業者の景品類は合算して上限を見るため、併用の仕組みを把握する必要がある。
アンバサダーに投稿を依頼しますか。依頼する場合、誰が内容を確認しますか。
事業者が依頼した投稿は、広告として表示の確認が必要。確認する人を決めないと、効果の断定表現を見落とす。
友人の連絡先は、誰が、どの画面で入力しますか。
本人以外が入力する方式は、個人情報の取得と、紹介者への通知の問題が出る。
紹介割引で契約したコースの中途解約時、提供済み回数の単価はどう計算しますか。
解約時の精算の前提が決まっていないと、お客様と計算がずれる。
紹介制度で起きがちなこと
最後に、紹介制度の設計で見落とされやすい点を整理します。
- 紹介者への特典を「値引きだから景品ではない」と考え、別メニューの無料券や物品を、上限を確認せずに渡す。
- 被紹介者への優待、紹介者への特典、アンケート景品が別々の企画として進み、同じ取引に合計すると上限を超える。
- 「会員だけの紹介制度」と書きながら、運用上は誰でも紹介者になれる状態で、紹介者の範囲が整理されていない。
- アンバサダーに無料施術を提供して投稿を依頼しながら、広告であることの表示を義務づけていない。
- アンバサダー認定に入会金や機器の購入を求め、紹介の成果に応じた報酬を設定してしまう。
- 紹介者に被紹介者の予約状況を知らせる仕組みで、被紹介者本人の同意を取っていない。
- 紹介特典で追加した無料回数を、契約書面の回数や総額に反映していない。
よくあるご質問
友人紹介で、紹介してくれた会員に「次回○円引き」の割引券を渡してよいですか。
割引券の形で、自社の施術に使うものであれば、総付景品の上限の例外とされる証票に当たりうる整理です。ただし、割引と同じ企画で物品も渡す、使い道を制限する、といった設計にすると値引きと認められなくなります。別メニューの無料券は割引券ではなく景品類として、取引価額に応じた上限の範囲に収めます。
体験料が5,000円のとき、紹介された人に渡せる物品の上限はいくらですか。
総付景品の上限は、取引価額が1,000円以上のとき取引価額の10分の2です。体験料5,000円なら1,000円が上限になります。同じ体験に別の企画の景品を付けるときは、同一事業者の分を合算して数えます。
アンバサダーに無料施術をして投稿してもらうとき、何を決めておくべきですか。
無料施術が投稿という仕事の対価であることと、投稿に広告であることが分かる表示を付ける義務、投稿前の内容確認、効果を断定する表現の禁止、修正・削除の依頼への対応を書面で決めます。事業者が依頼した投稿は、ステルスマーケティング規制の確認が必要です。
アンバサダーの認定に入会金を取り、紹介報酬を出すと、どうなりますか。
入会金が特定負担、紹介報酬が特定利益にあたりうるため、特定商取引法33条の連鎖販売取引の確認が必要になります。連鎖販売取引に当たると、契約書面の受領日から20日間のクーリング・オフ(同法40条)などの規制がかかります。負担を求めない設計にするか、制度の内容を個別に確認します。
友人の連絡先を紹介者に入力してもらう方式は問題ですか。
入力された友人の個人情報をサロンが取得した時点で、利用目的を本人に通知または公表する必要があります(個人情報保護法21条1項)。紹介者に予約状況を知らせるには、原則として本人の同意が必要です(同法27条1項)。被紹介者が自分で紹介コードを入力する方式にすると、この問題を避けやすくなります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別のサロンに必要な対応は、メニュー、使用する機器、料金の受け取り方、勧誘の方法によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認できます。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 厚生労働省 / 国民生活センター